2019 Fiscal Year Research-status Report
γ’相で強化したオーステナイト系鉄基超合金の開発-新規な超耐熱構造材料
Project/Area Number |
19K22053
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
乾 晴行 京都大学, 工学研究科, 教授 (30213135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸田 恭輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (20354178)
新津 甲大 京都大学, 工学研究科, 助教 (90733890)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄基超合金 / 耐熱構造材料 / 2相組織 / 整合析出 / 格子ミスフィット / 高温強度 / クリープ / 単結晶 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄鋼材料ではこれまで合金元素として考えられたことがないGeに着目し、Fe-Ni-Ge 3元系でL12-(Fe,Ni)3Ge(γ’)相とFCC-(Fe,Ni) (γ)相がかなりFeリッチ組成(Fe/Ni=3.53)まで共存し、Ni基超合金と同様のCube-On-Cube方位関係で整合析出したγ-γ’2相組織が所望の相分率で形成することを最近見出した。γ-γ’2相組織がNi基超合金(γ’相分率は通常65%程度)と同様に耐熱性・高温強度に直結するならば、γ’相で強化したFe基超合金の開発に繋がる発見といえる。実用に必要と考えられる合金元素(Cr, Al, Siなど)を更に添加し、γ’相の相安定性の変化と高温力学特性の相関を確立しつつ、現在の耐熱鋼の630℃を遥かに超える耐用温度をもつ新規なγ-γ’2相Cuboidal組織をもつ世界初の本格的なFe基超合金耐熱鋼の開発を目指している。 同じL12構造を持つFe3GeとNi3Geがその擬2元系で全率L12固溶体を形成し、このL12-(Fe,Ni)3Ge固溶体相とFCC-(Fe,Ni)相の相平衡を調べ、この2相はかなりFe-rich組成(最大でFe/Ni=3.53)まで共存でき、2相領域も広く(Ge濃度で14~19 at.%)その体積分率を容易に変えることができることが明らかとなった。適切に熱処理をすれば,Cube-On-Cube方位関係で整合析出したγ-γ’2相組織を所望の体積分率で容易に形成できることも明らかとなった。「γ-γ’2相Cuboidal組織の(長時間)高温強度はγ’相の相安定性が重要な決定因子となる」との仮説のもと、800℃でγ’相が体積率で60%になるよう組成調整した合金では700℃でも500MPaを越える非常に高い高温圧縮強度を示し、γ’相の相安定性の高さとともに高い高温クリープ特性を予測させる結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、主としてFe-Ni-Ge3元系合金で最適組織制御プロセスの開発とそれによって作製された合金の高温力学特性の解明を行った。同じL12構造を持つFe3GeとNi3Geがその擬2元系で全率L12固溶体を形成し、このL12-(Fe,Ni)3Ge固溶体相とFCC-(Fe,Ni)相の相平衡を調べ、この2相はかなりFe-rich組成(最大でFe/Ni=3.53)まで共存でき、2相領域も広く(Ge濃度で14~19 at.%)その体積分率を容易に変えることができることが明らかとなった。適切に熱処理をすれば,Cube-On-Cube方位関係で整合析出したγ-γ’2相組織を所望の体積分率で容易に形成できることも明らかとなった。γ-γ’2相Cuboidal組織が最適組織であるが、溶体化処理温度でγ単相とならなければ最適組織を得ることができない。γ’相体積を大きくしようとGe濃度を高めると、初晶のγ’相あるいはDO3相が晶出し、溶体化でγ単相とすることができない。このような限界のGe濃度をFe/Ni組成比の関数として決定した。最もFe/Ni組成比の大きい組成で決定した化学組成では、1000℃の溶体化でγ単相となり、800℃の時効でγ’相の体積率を60%にすることができる。組織観察の結果では、700℃以下ではγ’相の体積率に変化はないが、それ以上の温度で温度上昇とともに体積率は減少する。これに対応して圧縮強度は室温から700℃まであまり変化することなく500MPaを越える非常に高い値を示し、γ’相の相安定性の高さとともに高い高温クリープ特性を予測させる結果である。この合金は、多結晶でも室温で50%以上の伸びを示し、靭性(延性)にも富んでいる。また、単結晶作製が可能であることが明らかとなり、このクリープ強度の測定を次年度に予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のごとく、最もFe/Ni組成比の大きい組成で決定した最適組織を有する化学組成の合金では、1000℃の溶体化でγ単相となり、800℃の時効でγ’相の体積率を60%にすることができ、圧縮強度は室温から700℃まであまり変化することなく500MPaを越える非常に高い値を示すため、是非、高温クリープ特性を次年度に調査したい。単結晶作製が可能であるため、[001]方位単結晶の引張クリープ変形を行って特性をNi基超合金と比較する。合金はCube-On-Cube方位関係で整合析出したγ-γ’2相Cuboidal組織を有するが、最近のX線回折実験から正の格子ミスフィット(γ’相の方がγ相より格子定数が大きい)を持つことが明らかとなりつつある。経験的には負の格子ミスフィットを持つ合金の方が高温クリープ特性は良好であり、合金元素添加により格子ミスフィットの制御も行う予定である。先行研究からはNb, Tiの添加が有効な可能性があることがわかりつつある。 しかし何よりもこの合金を800℃近傍の高温で使おうとするならば、耐酸化性、耐食性の観点から比較的多量のCrの添加が必要である。Fe-Cr-Niがステンレス鋼をはじめとする耐熱鋼の主成分であることから予測できるようにCrはγ相形成元素であり、その添加に従ってγ-γ’2相平衡でγ相がより安定となり、γ’相の体積率が減少する。この減少を極力抑制しつつCrをどこまで添加できるか、次年度はこれに挑戦する。先行研究で、Fe-Ni-Cr-Ge4元系合金で8at%までCrを添加しても、800℃におけるγ’相の体積率の減少は40%までに抑制されており、さらなる添加元素(γ’相形成元素)の添加により、さらに800℃におけるγ’相の体積率を増大させ、高温力学特性、耐酸化性などの評価を次年度に行いたい。
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