2019 Fiscal Year Research-status Report
Ti合金における変形誘起相変態に起因した弾性率軟化現象の解明と生体材料への応用
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19K22059
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
多根 正和 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (80379099)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 塑性変形 / 相変態 / チタン合金 / 弾性論 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨折用プレート等の生体インプラント(埋入用)材料の応用において、チタン合金等の生体インプラント用材料の低ヤング率化が求められている。最近、低ヤング率化を実現したβ型チタン合金において、その弾性率が塑性変形およびそれに伴うオメガ変態(変形誘起オメガ変態)によって低下する可能性が明らかとなった。しかし、塑性変形およびそれに伴う変形誘起オメガ変態と弾性率変化との相関関係はこれまでにほとんど明らかになっていない。そこで、本年度は変形誘起オメガ変態に関連した弾性率変化を詳細に明らかにするため、Ti-V合金の単結晶を作製し、圧縮変形に伴う弾性率変化を調べた。まず、アーク溶解法により、高純度TiおよびV素材を用いてbcc安定化元素濃度の異なるTi-V合金を作製した。作製した母合金を用いて、アルゴンガス雰囲気下での光学的浮遊帯域溶融法により、bcc安定化元素濃度の異なる単結晶を育成した。育成した単結晶から、ラウエ法および放電加工機を用いてすべての面が{100}面で囲まれた数mm角程度の直方体試料および試料底面が結晶の(111)面となるディスク状試料を切り出した。さらに、得られた単結晶試料に対して、bcc相単相領域での溶体化処理を行った。溶体化処理後の直方体試料に対して、超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて、立方晶系の単結晶弾性率 (c11, c12およびc44) の測定を行った。次に、弾性率測定を実施した試料に対して、万能試験機を用いて室温での圧縮試験を行い、2%程度の塑性ひずみを与えた。さらに、塑性変形後の試料に対して、再度、超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて弾性率測定を実施した。これにより、圧縮変形が弾性率変化に及ぼす影響を明らかにすることで、bcc構造の安定性と弾性率変化との相関関係を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
bcc構造の安定性の異なるTi-V合金の単結晶試料を作製した。作製した単結晶試料に対して、超音波共鳴法と電磁超音波共鳴法を組み合わせた手法を用いて、単結晶弾性率の測定を行った。次に、弾性率測定を実施した試料に対して、万能試験機を用いて室温での圧縮試験を行い、2%程度の塑性ひずみを与え、塑性変形後の試料に対して、再度、弾性率測定を実施した。これにより、圧縮変形が弾性率変化に及ぼす影響を明らかにすることができた。これらの結果を受けて、bcc構造の安定性と弾性率変化との相関関係を明らかにすることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
bcc構造の安定性の異なるTi-V合金の単結晶試料に対して、室温時効に伴う単結晶弾性率変化の測定を実施する。室温時効に伴う弾性率変化と圧縮変形に伴う弾性率変化とを比較することで、室温時効に伴う無拡散等温オメガ変態と塑性変形に伴う変形誘起オメガ変態との相関関係を明らかにする。さらに、単結晶試料のX線回折測定およびマイクロメカニックス理論を用いた弾性率変化の解析を行い、室温時効に伴う無拡散等温オメガ変態と塑性変形に伴う変形誘起オメガ変態によって形成されるオメガ相の形成量の解析を実施する。これらの実験および計算結果に基づき、変形誘起オメガ変態が引き起こす弾性率変化のメカニズムに対する考察を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。次年度使用額を、使用頻度の高い装置のメンテナンス費用および消耗品の購入費として使用し、研究を効率的に進める。
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Research Products
(9 results)