2019 Fiscal Year Research-status Report
超高速変形下の塑性発現機構の解明とその塑性加工法としての応用
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19K22061
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐野 智一 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30314371)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | フェムト秒レーザ駆動衝撃波 / 転位 |
Outline of Annual Research Achievements |
塑性変形の機構は、一般的には、材料中に内在する転位がある特定のすべり面上において特定のすべり方向に移動するせん断変形による、とされている。本研究では、超高速変形下で発現していると考えられる、この一般的な塑性変形の原理とは異なる機構を解明し、それを新しい塑性加工法として応用することを目的とする。本研究では、材料を超高速変形させるために、パルス幅がフェムト秒~ピコ秒の超短パルスレーザ駆動衝撃圧縮を利用する。本研究では、材料が超高速変形する際の転位の挙動をX線で直接計測することによって、超音速転位あるいは転位を介在しない塑性すべりの存在を調べ、衝撃波頭背後での転位核生成モデルを新たに構築することによって、超高速変形下の塑性発現機構を明らかにする。さらに、この塑性変形がマクロな機械特性に及ぼす影響を調べ、新しい塑性加工法としての展開を図る。 今年度は、降伏応力の高いBCC構造をもつ鉄鋼材料にフェムト秒レーザパルスを照射し、材料中に形成される格子欠陥と、硬さ、残留応力といった機械特性と、これらの相関関係を評価した。その結果、パルスエネルギー0.7 mJ、パルス幅130 fsのフェムト秒レーザを高張力鋼(HT780)および超高張力鋼(HT980)に照射することによって、表層を硬化し、圧縮残留応力を導入することに成功した。また、硬化した部分の転位密度は2倍程度に増加していた。レーザー溶接して引張残留応力のかかっているHT780にフェムト秒レーザーを照射することによって、引張残留応力を圧縮残留応力に変化させることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、超短パルスレーザ駆動衝撃圧縮による塑性変形がマクロな機械特性に及ぼす影響を調べ、新しい塑性加工法としての展開を図ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、FCC構造であるアルミニウム材料とBCC構造である鉄鋼材料に対し、レーザーのパルス幅、パルスエネルギー、スポットサイズから決まるレーザー強度が硬さ、残留応力といった機械特性に及ぼす影響を明確にする。このために、パルス幅、パルスエネルギー、スポットサイズを変化させ材料に照射し、材料の硬さ測定、残留応力測定を実施する。さらに、初期温度および冷却速度がこれら機械特性に及ぼす影響を調べるためのファイバーレーザ加熱中のレーザー照射実験の準備を開始する。 また、これらの材料内部の格子欠陥の種類や特徴を評価するために、透過電子顕微鏡による微細組織観察、転位組織観察、析出物観察を実施する。 さらに、これらの材料内部の残留ひずみ状態を、放射光X線によって評価するために、SPring-8の高エネルギーX線を用いた回折実験を実施する。
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Causes of Carryover |
【理由】2019年度内に購入する予定であった材料の納品が遅れ、2020年度に納品されることになったため。 【使用計画】2019年度内に購入する予定であった材料の納品が遅れ、2020年度に納品されることになったため2019年度の研究費に未使用額が生じたが、2020年度に納入されるため、2020年度に実施する予定の研究計画と併せて実施する。
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Research Products
(12 results)