2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K22062
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
齋藤 彰 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90294024)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ構造 / 乱雑さ / 透過光 / ディフューザ― / モルフォ蝶 / 作製 / 採光窓 / バイオミメティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
申請した内容に基づき、段階を追って順序だてて計画を遂行していった。本計画の主題はモルフォチョウの特異な光学特性、特に「ナノの乱雑さ」に基づく新たなディフューザの開発である。光が入射する物体において「入射界面付近に限定したナノスケールの乱雑構造」を工夫することで、「高透過率・広角拡散・波長分散なし」を並立する従来にない「モルフォ型ディフューザの実現」である。取組はまず、設計で構造の最適化を行い(シミュレーション)、上記の光学特性で所定の値(透過率、角度広がり、波長分散)を見積もる。次に、設計した構造を半導体ベースのナノ製造技術を用いて自ら作製する。さらにディフューザとしての用途を踏まえ、ナノインプリントでフィルム形成を行う。最後に作製したディフューザに対して構造・光特性ともに精密な測定を行い、評価を行う、という手順である。 まず設計では、FDTD法(電磁場数値計算)を用いた構造設計を行った。乱雑な幅からなるナノパターンを設計し主要パラメータを振って構造最適化した結果、シミュレーション上で「透過率85%, 角度広がりFWHM 69°, 波長分散なし」が得られた。次に、リソグラフィとナノインプリントによる微細構造作製などを駆使し、設計したナノパターンをSiウエハ上に作製した。その後、UV硬化樹脂にナノインプリントすることで、モルフォ型ディフューザの試作を行った。光学測定の結果、本試作品は「透過率85%, 角度広がりFWHM 66°, 波長分散なし」と設計値に近い性能を示し、透過率と拡散性の双方で従来型を凌駕することが分かった。また、異方的な構造設計により、従来型では困難だった異方拡散も確認した。以上の点から、モルフォ型ディフューザを実証できた。一方、得られた特性はまだ理想的ではなく、指向性の強いコリメート光では、拡散光の分布に不具合が見られる等、改善点も見出された。
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