2019 Fiscal Year Research-status Report
プロトントンネル:新たな量子拡散効果の実証と学理構築
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19K22064
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 仁丈 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (30292246)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | プロトントンネル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、金属酸化物中におけるプロトン量子トンネル拡散現象を世界で初めて実証し、新たな学問体系の構築に端緒をつけることである。金属酸化物中のプロトンは、室温以上においてアクセプタードーパントにトラップされており、熱エネルギーを利用しトラップから逃れることで長距離拡散するが(Yamazaki et al., Nature Mater. 2013)、0 Kではポテンシャル障壁を通り抜けるトンネル効果が計算で示唆されている。しかし、実験的に実証するには至っていない。本研究では、中温度域におけるプロトン伝導度が世界最高と知られているアクセプター置換ジルコン酸バリウムを対象に、極低温におけるプロトン伝導度やプロトン拡散係数の温度依存性を決定し、その活性化エネルギーや同位元素効果、トンネル確率を根拠としてプロトン量子トンネル拡散現象を世界に先駆けて実証することを目的としている。室温(300 K)から液体窒素温度(77 K)までの幅広い温度範囲において決定したプロトン拡散の活性化エネルギーは180 K以下において2 kJ/molまで低下し、プロトン移動の量子効果が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、プロトン濃度が既知のアクセプター置換ジルコン酸バリウムペレットを低温測定用電気化学セルにセットすることで、室温(300 K)から液体窒素温度(77 K)までの幅広い温度範囲においてプロトン伝導度を測定、プロトン拡散係数を決定した。室温以上においてプロトンが長距離拡散するには、トラップから抜け出し隣接サイトへジャンプしなければならず、その活性化エネルギーは45 kJ/molである[Nature Mater. 2013]。低温電気化学セルを用いた予備実験で低温におけるプロトン拡散係数を決定した所、拡散の活性化エネルギーは180 K以下において2 kJ/molまで低下した。交流インピーダンス計測の測定限界に達していないため、測定限界に起因するものではなく、プロトン拡散の量子化(プロトントンネル)を示唆している。このように、当初予定した実験が順調に進んでいることから、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、プロトン濃度を0.01から0.2まで制御したプロトン伝導性イットリウム置換ジルコン酸バリウム試料を作製し、低温におけるプロトン伝導度を測定、プロトン拡散係数を決定する。これにより、プロトン拡散の活性化エネルギーのプロトン濃度依存性を確認、これらパラメータとプロトンの量子トンネル拡散効果を定量的に関連づける。これにより、金属酸化物のプロトン量子トンネル効果に関する新たな学問体系の構築に端緒をつけたい。
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