2019 Fiscal Year Research-status Report
分子シミュレーションによる有機無機界面の親和性評価とコンポジット材料設計への展開
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19K22076
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
塚田 隆夫 東北大学, 工学研究科, 教授 (10171969)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / 付着仕事 / 超臨界水熱合成 / 表面修飾ナノ粒子 / 高分子ナノコンポジット |
Outline of Annual Research Achievements |
分子動力学シミュレーションに基づいた有機分子修飾ナノ粒子/高分子界面の付着仕事を評価するシミュレーション手法の開発に向け,本年度は有機修飾無機固体平面/有機溶媒界面の付着仕事の解析法を確立した.具体的な対象として,無機固体はAl2O3,修飾有機分子はデカン酸,溶媒はヘキサンとし,デカン酸の表面修飾率を0~100%と変更したときの付着仕事を,熱力学的積分法の一つであるPhantom-wall法により算出した.なお,計算はLAMMPSを使用して行った.結果として,デカン酸修飾により付着仕事は増加し,修飾率50%で最大を示し,修飾率100%は0%よりも付着仕事は大きくなった.各修飾率における表面修飾ナノ粒子/溶媒界面の様子を詳細に観察した結果,デカン酸修飾率の増加に伴い,Al2O3表面とヘキサンの接触原子数は減少し,一方デカン酸とヘキサンの接触原子数は増加した.デカン酸とヘキサンは,Al2O3とヘキサンよりも親和性が高いため,修飾率の増加とともに付着仕事は増加する.しかし,修飾率50%を超えると,デカン酸層へのヘキサンの侵入が減少するため,デカン酸とヘキサンの接触原子数が減少し,さらに修飾率100%ではヘキサンはデカン酸の末端部のみと接触するため,付着仕事は修飾率50%に比べ減少することがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究期間の実施項目として,1) ナノ粒子/高分子界面の付着仕事の解析法の開発, 2) 操作因子-付着仕事のデータベース化・相関の解明,3) 操作因子-ナノ粒子構造のデータベース化,4) 付着仕事-ナノ粒子構造の相関の解明,5) ナノコンポジット材料の構造予測法の確立を挙げている.これら5項目のうち時間の掛かる項目は,1)の付着仕事の解析法の開発と,3)に関るコンポジット材料の調整とその構造解析である.1)については,研究実績で述べたように,ナノ粒子/有機溶媒系に限るが,本年度で付着仕事の解析法の開発は終了し,有機溶媒に代わる高分子の分子モデル構築が残されているだけである.3)については,申請者らは,ナノコンポジット薄膜作製・構造解析の実績を既に有しているため,今後はナノコンポジットバルク材料の調整・構造解析に注力する予定である.以上,最も時間を要する1)をほぼクリアできていることから,現在までの進捗状況として「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べたように,(1)については,高分子の分子モデルの構築を行い,ナノ粒子/高分子界面の付着仕事の解析法の開発を完了する.また,(3)については,主に高分子ナノコンポジットバルク材料の混練実験及び材料中のナノ粒子の構造解析を実施する.分子シミュレーション及びナノコンポジット材料の調整・構造解析いずれにおいても,有機分子修飾ナノ粒子,高分子の種々組合せに対する付着仕事,ナノ粒子構造に関るデータの蓄積を進める必要がある.
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Research Products
(2 results)