2019 Fiscal Year Research-status Report
半導体ナノシートのヘテロ接合に立脚した新たな触媒設計法の開拓
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19K22078
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岸本 史直 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員 (00835738)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 固体触媒 / 半導体接合 / ナノシート / 炭化水素転換 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、n型Si担持酸化タングステンナノシート触媒に集中して触媒合成並びに電子状態の評価を行った。 層状タングステン酸塩を前駆体とし、水溶媒中で両親媒性のオクチルアンモニウムと反応させることで層状構造からのナノシート剥離を行った。得られたナノシート分散液をSi基板上にスピンコートすることで、酸化タングステンナノシートを堆積した。この際、研究計画に従ってナノシートの厚さを制御することを目的として、1層当たりの厚さの異なる二種類の結晶構造の層状タングステン酸塩(H2WO4, H2W2O7)を用いたところ、サブナノメートルオーダーで精密に厚さが制御された酸化タングステンナノシートをSi基板上に堆積させることに成功した。また、研究計画に従ってキャリア密度の異なる酸化タングステンナノシートを堆積させることを目的に、フラックス法によって格子欠陥を提言した層状タングステン酸塩を前駆体に用いて、酸化タングステンナノシートの堆積を試みた。 得られた酸化タングステンナノシートの電子構造が、Si基板との電子的相互作用による影響を受けて変化することを、光電子分光法を用いて調べた。X線光電子分光法によって、n型Si基板上の酸化タングステンナノシートには、n-nヘテロ接合に基づくd電子充填が起こることを明らかにした。また、紫外線光電子分光の結果から、Si基板の多数キャリをp型・n型とで変化させることで、基板上の酸化タングステンナノシートの価電子帯の電子構造が大きく変化することを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、厚さ・キャリア密度を独立に制御した酸化タングステンナノシート触媒の合成、およびそれらのナノシートの電子構造を光電子分光法を用いて評価することができた。層状タングステン酸塩を水溶媒中でオクチルアンモニウムと反応させて剥離し、スピンコート法によってSi基板上に平滑なナノシートとして成膜できることは、本研究を通して初めて明らかにしたことである。実験手順は非常に簡便であり、今後の触媒反応への展開においても非常に有力な手法となる。以上の研究進捗状況は研究計画に従うものであり、本研究はおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)Si基板担持酸化タングステンナノシートの触媒活性評価:Si基板との半導体接合によって引き起こされる酸化タングステンナノシートの触媒活性の変化を明らかにする。既に今年度中に、表面積の少ない基板型の触媒でも精密に触媒活性評価が可能な、気相閉鎖循環型の触媒反応装置の整備を行った。酸化タングステンがオレフィンメタセシス反応に対して高い触媒活性を示すことが既に知られていることから、オレフィン転換反応を足掛かりに推進する。 (2)Si基板上の酸化タングステンナノシートの電子構造評価:これまでに確立してきた光電子分光法による酸化物ナノシートの電子構造の評価手法を利用して、Si基板のキャリア密度、酸化タングステンナノシートの欠陥密度などに迫った電子構造変化を明らかにする。 (3)他のナノシート触媒への展開:本研究で確立したSi基板上へのナノシート触媒の堆積手法を、他のナノシート材料(H2Ti3O7, HNb3O8)に展開する。半導体接合によって引き起こされる電子構造変化が、ナノシート触媒活性に及ぼす影響を体系的に理解する。
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Research Products
(1 results)