2021 Fiscal Year Research-status Report
再生可能発電と放射性元素変換を同時に実現する反応場としての金属ナノ構造の機能開拓
Project/Area Number |
19K22081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田辺 克明 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60548650)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 水素 / 金属 / エネルギー / 核融合反応 / 表面化学 / 水素貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
実験装置として,重水素吸蔵室,電子線蒸着室,反応分析室からなるステンレス製の真空反応装置を用いた。まず,Pd 試料板(3 cm×3 cm×1 mm)のアニール(N2 雰囲気下,1000 C,10 時間)を行った。次に,このPd 板にAu コロイド溶液(0.0067 wt%)及びAg コロイド溶液(0.05 wt%)を塗布し,スピンコートを行った。その後,真空乾燥を行った。次に,Pd 試料板を高真空状態 (約1×10-7 Torr)の蒸着室に輸送して試料片面に電極としてAu を約100 nm の厚さに蒸着した。続いて,D2 ガス(純度99.6 %)を1 気圧充填した吸蔵 室へと輸送し,試料を10 時間放置し平衡状態に達するまで吸蔵させた。その後,試料を高真空状態の反応分析室に輸送し,試料のAu 蒸着側にK 熱電対とW 電極を接触させ,電圧を一定に制御して通電加熱を行った。また,電極とは逆側からYAG レーザー(1064 nm,最大10MW)を照射した。この時の試料への印加電力と温度の経時変化を測定した。ガス比例計数管(NSN3, 富士電機)を用いて反応時に発生する中性子線の強度を測定し,さらに液体シンチレータを利用して中性子線の個数とエネルギー帯の測定を行った。また,質量分析器(RGA,MKS)を用いて反応時の質量数3 及び4 の分圧を測定し,Ganma-Scout を用いてガンマ線の測定を行った。 Pd 試料上に均一に金属ナノ粒子を塗布することに成功した。金属ナノ粒子を担持し,D2を吸蔵したPd 試料に対して真空中で通電加熱を行い,レーザーを照射することによって,試料の過剰発熱,中性子線の発生,質量数3の分圧上昇といった核融合反応を示唆する異常反応を観測した。しかし,液体シンチレータおよびガンマ線測定からは現段階では有意な結果を得ることができていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染防止対応のため当初の予定通りに研究活動を進めることができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては,再現性の更なる向上は必須課題である。今後の方針として,再現性の向上のため,最適な温度や照射するレーザーの種類,電流の向きといった反応条件の最適化を行う。また,Pd 試料に様々な種類の金属ナノ粒子を様々な塗布条件で担持させ,通電加熱実験を行う。また,中性子の個数やエネルギー帯を測定できる液体シンチレータを導入した通電加熱実験を今後も行い,比例計数管と液体シンチレータのダブルチェックを行うことで,中性子線がPd 試料から実際に発生しているのか検討する必要がある。核融合反応で生じる中性子線のエネルギー帯と本実験で生じる中性子線のエネルギー帯を比較することで,核融合反応であるかの検討が可能である。同様にガンマ線を測定できるGanma-Scout を導入した通電加熱実験を行うことも重要であると考える。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染防止対応のため当初の予定通りに研究活動を進めることができなかったため。そのため、当初の計画では2021年度が最終年度であったが、研究期間を1年延長させて頂いた。
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