2019 Fiscal Year Research-status Report
ハイエントロピー合金ナノ粒子の新規創成とその触媒機能発現に関する研究
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19K22082
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 浩亮 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90423087)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ハイエントロピー合金ナノ粒子 / 触媒材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題では、触媒材料として全く未開拓なこの『ハイエントロピー合金』に着目し、触媒機能発現を目指したナノ粒子化法の確立、ならびに触媒活性金属としての利用の可能性探索を世界に先駆け行う。Cr、Ni, Cu, Fe, Co, Mn, Znなどの卑金属を構成主成分とするハイエントロピー合金のナノ粒子化に関する成功例がこれまで無い最大の理由は、低温において多成分金属の均一な核生成が困難であることが考えられる。 本課題を克服するため、『固体表面水素スピルオーバーを還元駆動力とした均一ナノ粒子合成法』を利用する。水素親和性の強い貴金属上で生成したヒドリド種は非常に強力な還元力を有し、隣接した難還元性卑金属の還元を促進する。特に『二酸化チタン(TiO2)』上では、水素スピルオーバーの協同作用で本効果がより顕著に発現し、複数の金属前駆体が低温にて同時に還元され、従来法では調製が困難である非平衡相から成る合金ナノ粒子の合成に成功している。 本年度は、本技術をさらに発展させ、熱力学的状態図、電気陰性度、イオン化ポテンシャルなどの物性およびこれまでの知見に基づいて合金の候補を抽出し、固体表面水素スピルオーバーを還元駆動力にした合成プロセスにおける条件の最適化を系統的に行った。そのなかで、PdRuCoNiCuハイエントロピー合金が生成することを明らかにした。また合成したハイエントロピー合金ナノ粒子をXAFSのその場観察、HAADF-STEM像等により確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的実現のため、2019年度~2020年度前半にi) ハイエントロピー合金のナノ粒子化、2020年度後半から2021年度にii)触媒機能探索を行う。本年度は、『固体表面水素スピルオーバーを還元駆動力とした均一ナノ粒子合成法』に関して主に検討を行った。特に熱力学的状態図、電気陰性度、イオン化ポテンシャルなどの物性およびこれまでの知見に基づいて、PdRuCoNiCu系を選択し、その生成機構、高活性発現の要因をin situでの時間分解XAFSを用いて明らかにできた。
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Strategy for Future Research Activity |
主に研究項目IIの触媒機能探索を行う。具体的には、項目Iで開発したナノ粒子触媒の性能を不飽和カルボニル化合物の選択的C=O結合水素化反応にて評価する。ここでは反応中でのハイエントロピー合金の酸化による機能低下を避けるため高難度還元反応を選択した。本反応の鍵は、電子リッチなカルボニル基を触媒活性金属に選択的に吸着させることである。多成分金属が単相固溶体を形成したハイエントロピー合金ナノ粒子表面では電子的配位子効果、幾何学的協奏効果により特異的な分子認識能を発現する可能性を秘めている。さらに、得られた反応結果と各種分光学的手法を駆使して解明した触媒微細構造との関連を明確にし、更なる高性能触媒の設計指針にフィードバックする。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスの影響により、2019年度に購入予定していた購入物品等の遅延が予想されたため、2020年度にて購入することにした。
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