2019 Fiscal Year Research-status Report
Highly selective hydrogen separation using carbon nanosheet membrane
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19K22087
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木田 徹也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70363421)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 酸化グラフェン / プロトン伝導 / 水素 / 透過膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
水素を次世代のエネルギー源として利用するためには水素の安定供給が不可欠である。そのためには経済性に優れた水素製造法を利用する必要があり、同時にその分離・精製技術も開発しなければならない。水素の製造方法としては炭化水素の水蒸気改質によるものが主流であるが、その場合、未反応原料や一酸化炭素が共存する中、水素のみを取り出す事が必要となる。ここで、この分離・精製プロセスをより効率化できれば 水素製造の低コスト化が達成されるはずである。そこで本研究では、酸化グラフェン(Graphene oxide: GO)ナノシート膜を用いて、混合ガスから水素のみを分離する技術を開発する。 超選択的水素透過のためには、プロトン導電率の向上が最重要である。そこで今年度は次の手法により、プロトン導電性の大幅な改善を試みた。 1.層間隔制御による導電性向上: 本研究ではGOナノシートを積層させた自立膜を使用した。積層膜に高価数のカチオンを挿入することでGOナノシート間の層間距離を増加させ、プロトン輸送率を向上させることができた。特に、Ceイオンを添加して層間距離を増加させれば導電率が大きく向上すること見出した。また、添加によって膜の機械的強度も向上した。これはGOナノシートのエッジに存在するカルボキシル基とカチオンとの間に静電引力によるものと考えている。 2.ナノシートのサイズ制御による導電性向上:プロトンは層間およびナノシート間の間隙を拡散する。従って、ナノシートの幅を減じて間隙の数を増やせば、拡散パスが増加し、導電率が向上すると予測した。従来、ナノシートを小さくすると強度が不足するという問題があったが、カチオンを添加することによっても、ナノシートのサイズを減じても強度が劣化することなく、導電率が向上できることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通りに研究が進んでおり、目標とするプロトン導電率の大幅な向上を達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は以下について検討する。 1. 精密部分還元法の確立:熱およびUV照射法で部分還元を行う。膜の酸素含有率のプロトン導電率と電子導電率に及ぼす影響を電子ブロッキング法(イオン導電性)および水素濃淡電池法(輸率)により精査し、両者が最大となる還元度および還元手法を見出す。 2. 窒素ドーピング:高電子導電性の窒素ドープGOを合成し、これをGO膜に一部混合して混合導電 性膜とする。電子-プロトン導電率を精査し、最適な混合比を見出す。 3. ナノシートの配向制御による導電性向上:プロトンは主にナノシートの層間を拡散する。そのため、膜の横方向のプロトン導電率は縦方向に比べ二桁以上大きい。そこで、混合導電率を最大化したGO積層膜を切断し、得られた断片を幾つか縦に並べ、樹脂で固めて膜を作製し、水素透過に供する。 4. 電極触媒探索:膜表面での水素のアノード酸化、および膜の反対面でのプロトンと電子の再結合反応を効率的に進行させるための最適な触媒を探索する。まずはPt/C触媒を使用し、順次IrO2、RuO2などを検討する。最後に触媒層の膜厚および多孔度を制御し、超選択的水素透過を達成する.
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Causes of Carryover |
研究の進展とともに次年度以降に多くの経費が必要なことが判明したため、翌年度分に助成金を繰り越した。翌年度は、電子導電性の評価に必要な備品を購入する計画である。
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