2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of wavelength-dispersive depth-resolved X-ray absorption spectroscopy and real-time observation of reactions in perpendicular direction of films
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19K22091
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
雨宮 健太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (80313196)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 軟X線吸収分光 / 深さ分解 / 波長分散型 / リアルタイム観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,数nmからμm程度の厚さの薄膜において,電界などによって引き起こされるイオンの移動を伴う化学反応が,時間とともに深さ方向に進行していく様子を,深さ分解軟X線吸収分光法を用いて非破壊かつリアルタイムで観察する,新たな手法を開発することを第一の目的としている。 本年度はこれを実現するために,位置によって波長の異なる(波長分散した)軟X線を試料に照射し,試料上の異なる位置から放出される蛍光X線を弁別して取り込むための,蛍光X線結像システムの設計・製作を行った。このシステムは2枚の球面鏡から構成され,試料上において約2 mmの範囲に照射される波長分散した軟X線を,約2.5倍に拡大して軟X線CCDカメラ上に結像するものである。蛍光X線の強度は,それぞれの位置に対応する波長(エネルギー)における軟X線の吸収強度に比例するため,蛍光X線強度を試料上の位置の関数としてプロットすることによって,軟X線吸収スペクトルを一度に(軟X線分光器を掃引することなく)測定することができる。 本年度はさらに,製作した蛍光X線結像システムをKEK物構研フォトンファクトリーの軟X線ビームラインBL-7Aに接続し,Fe板を試料として軟X線吸収スペクトルの測定が行えることを確認した。Fe板上において2 mm程度の範囲に波長分散したエネルギー690-730 eVの軟X線を照射し,Feから放出される蛍光X線を,製作した蛍光X線結像システムによって軟X線CCDカメラ上に結像させることに成功した。得られた軟X線吸収スペクトルは,よく知られているFeの吸収スペクトルに一致し,この測定法の妥当性が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の実現のために必須である,蛍光X線結像システムを設計・製作し,実際に軟X線ビームラインにおいて,軟X線吸収スペクトルを分光器の掃引を行うことなく測定できることが確認できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
製作した蛍光X線結像システムを用いて,薄膜試料に対する深さ分解軟X線吸収スペクトルを連続測定し,深さ方向に進行する化学反応のリアルタイム観察を行う。 具体的な研究対象としては,磁性薄膜であるGdOx/Co界面において,電界の印加によって引き起こされる酸化還元反応と,それに伴って起こるCoの磁性の変化を,深さおよび時間分解して追跡することを予定している。
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Causes of Carryover |
現有物品の活用によって,蛍光X線結像システムの製作にかかる費用を抑えられたこと,および,参加予定であった日本物理学会年会が,新型コロナウイルス感染症の影響で中止になり,出張旅費が必要なくなったことにより,次年度使用額が生じた。次年度は薄膜試料の作製システムの構築,および学会等における成果報告のために助成金を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)