2020 Fiscal Year Research-status Report
Creation of light-induced large magneto-dielectric devices using magnetic nanostructures
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19K22093
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
海住 英生 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70396323)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西井 準治 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (60357697)
長浜 太郎 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20357651)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | スピントロニクス / ナノ構造 / 磁性 / 誘電率 / 光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子の電荷とスピンの2つの自由度を利用する「スピントロニクス」は、今世紀に入り輝かしい発展を遂げてきた。中でも、磁場により電気分極が変化する磁気誘電(MD)効果は磁気メモリ、ロジック回路素子、高周波インピーダンスチューナブルデバイス等への様々な応用が期待されていることから大きな注目を集めている。MD効果は、時間反転対称性と空間反転対称性が破れている系で観測される。これまでにMD効果は磁気ナノグラニュラー材料、強磁性トンネル接合、分子スピンバルブ素子、強磁性単電子トランジスタ等の系で見出されてきた。本研究課題では、強磁性ナノ構造に着目し、これにより光照射巨大磁気誘電デバイスの創製に挑戦する。本研究課題の推進は、光学、磁性、誘電性が互いに融合した新たな学際領域を創出させると同時に、次世代超高感度・低消費電力磁気メモリ素子の実現に向けた新しい設計指針を与えるものと期待できる。 本研究目標を達成するため、当該年度では、強磁性ナノ構造として、絶縁体中に磁気ナノ粒子を分散させた磁気ナノグラニュラー材料に着目し、光磁気誘電特性を調べた。光磁気誘電測定には独自で構築したレーザー光照射磁場中交流4端子法を用いた。その結果、レーザー光照射下において誘電率が変化する光誘電効果を見出した。この光誘電率変化は数kHzと数100kHz付近でピークを有する周波数特性を示した。また、本実験結果は2種類の誘電率から構成される並列等価回路を取り入れたデバイ・フレーリッヒ模型により定量的に説明することができた。一方で、レーザー光照射下において誘電率のみならず、電気抵抗率も変化する光抵抗効果も見出した。この光抵抗効果では周波数により符号反転現象も見られ、種々の興味深い物理現象を発見することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を推進することにより、磁気ナノグラニュラー材料において、光誘電効果を観測することに成功した。このときの光照射による誘電率変化は10%以上を示した。本材料における直流での磁気抵抗変化は2%程度であることから、変化率の観点からは光誘電効果が優位であることがわかった。また、これらの実験結果はデバイ・フレーリッヒ模型を用いた計算により定量的に説明することができた。これらの結果は研究実施計画に従って得られた研究成果であり、これにより令和3年度の研究内容を予定通り遂行できるものと考えられる。このような事由から本研究は順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度に得た学術的知見に基づき、磁気ナノグラニュラー材料における光照射巨大磁気誘電効果の発現を目指すとともに、そのメカニズムを明らかにする。材料の観点からは、磁気ナノ粒子のサイズ依存性を詳細に調べる。光測定の観点からは、レーザー波長、パワー、直線偏光方位依存性を調べる。理論的な観点からは、当該年度に構築したデバイ・フレーリッヒ模型を用いて実験結果の説明を試みる。さらに、これらの実験的・理論的研究成果に基づき、新たに磁気ナノ接合も作製し、光磁気誘電効果について調べる。以上により、光照射を用いた巨大磁気誘電効果の発現を目指すとともに、そのメカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響で共同研究や成果発表のための出張ができなかったため、旅費を節減でき、次年度使用額が生じた。 経費の節減の結果生じた使用残額については、令和3年度に成果発表のための学会参加費・論文投稿料に使用する。
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Research Products
(8 results)