2019 Fiscal Year Research-status Report
熱環境応答型スマートメタマテリアルの提唱と熱スペクトル制御の実証研究
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19K22097
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金森 義明 東北大学, 工学研究科, 教授 (10333858)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 光デバイス / マイクロ・ナノデバイス / メタマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
メタマテリアルは金属サブ波長構造を単位素子とした人工光学材料である。誘電体ナノギャップを隔て積層されたナノパターン構造体で構成される積層メタマテリアルは、ナノギャップ空間に局在するフォトンモードに応答して特定周波数で強い光学共鳴応答を示す。また、ナノギャップのわずかな違いで局在フォトンモードが大きく異なるため、ナノギャップ層(通常はSiO2などの透明絶縁体が使われる)の厚みに応じて光学特性を調整できる。本研究では、誘電体ナノギャップを“気体(空気)”としたナノギャップ可変の積層メタマテリアルで構成され、環境変化に応答し環境のエネルギーを利用してメタマテリアル自らパッシブに構造変形し、適切な光学特性に調整可能な熱環境応答型スマートメタマテリアルの提唱と熱スペクトル制御の実証研究を行う。 本年度は、はじめにデバイスの仕様検討を行った。太陽光に対する遮熱窓への応用を想定し、可視領域での高透過率特性と近赤外領域での高反射率特性を両立するメタマテリアルのデザインを目指すことにした。また、現在知られている調光フィルター(相変化材料方式、液晶方式、MEMS駆動式etc)について、駆動源、駆動方式、動作波長、屈折率変化量の観点から比較検討を行い、本研究で提案するMEMS可動膜による方式の優位性を確認した。次に、メタマテリアルの光学設計を行った。計算はRigorous coupled-wave analysis法に基づく数値計算ソフト(DiffractMOD, 所有)を用いて行った。メタマテリアルの単位構造は、偏光無依存、且つ、可視光高透過率性と近赤外光高反射率性を兼ね備えた形状の設計に成功した。次に、機械構造の設計を行った。メタマテリアルと同一金属、透明可動膜と同一誘電体物質の組み合わせでバイメタル構造を設計した。次に、メタマテリアル構造とバイメタル構造のそれぞれの製作の条件出しを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、デバイスの仕様検討、光学設計、機械構造の設計、およびメタマテリアルとバイメタル構造それぞれの製作の条件出しまで行うことができた。デバイスの仕様検討では、現在知られている調光フィルターについて、様々な観点から比較検討を行い、本研究で提案するMEMS可動膜による方式の優位性を示すことができた。また、メタマテリアルで実現するスペクトルのデザインを決めることができた。次に、光学設計では偏光無依存、且つ、可視光高透過率性と近赤外光高反射率性を兼ね備えた形状の設計に成功した。機械構造の設計では、バイメタル構造の形状およびバイメタルを構成する物質の選定を行うことができ、バイメタルの変位計算を行い、理論的な変位量を得ることができた。また、プロセスの条件出しでは、メタマテリアルとバイメタル構造のそれぞれの試作を何度か行うことができ、それぞれの製作条件を詰めることができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、プロセスの条件出しをさらに進め、全工程の製作条件を追い込んでいく。その後、プロセス条件をもとにデバイスの製作を行う。デバイス製作・評価は何度か繰り返すことで製作精度を向上させていく。次に、製作したデバイスの特性評価を行う。外部ヒーターでデバイスを加熱した際の透過スペクトルを測定し、スペクトル制御性を評価する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で、R2年度に入ってからの共同施設の設備使用料や消耗品の購入費が少なくなったため。次年度、設備使用料や消耗品費として使用する計画である。
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