2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ空間コヒーレント熱・電子伝播計測システムの開発
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19K22100
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 淳 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60202165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
嵐田 雄介 筑波大学, 数理物質系, 助教 (30715181)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | グラフェン / フォノン / 伝播計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
微細化した構造の中でいかに熱(フォノン)を制御し高速で電子を操作するかは、次世代ナノデバイス・熱電変換デバイスの開発にとって避けては通れない課題である。そこで本研究課題では、グラフェン及び周期的構造を持つグラフェンをプラットフォームとし、熱フォノン・電子伝播のダイナミクスを検出する分光技術の開発を目指した。 本年は、まず、CVD成長させた多層グラフェンの高周波フォノンの電子・格子相互作用の膜厚依存性を明らかにするため、顕微ラマン分光法を用いたファノ共鳴のイメージングを行った。その結果、高周波Gバンドの電子・格子結合定数の層数依存性を1-2ミクロンの空間分解で計測することができた。観測したファノ共鳴の振る舞いは、レーザー誘起のサンプルの温度上昇によりグラフェンのフェルミレベルと緩和時間が変調を受けることで理解できる。 更に、単層グラフェンの超高速光学応答のフェルミレベル依存性を、イオン液体によるバイアス印加のもとで、サブ10フェムト秒ポンプ・プローブ法により計測した。その結果、フェルミレベルが励起光のエネルギーの半分程度になったとき、電子応答の緩和時間と振幅が最大になることを見出した。ポンプ光誘起の光学伝導度の解析から、緩和経路のブロッキングが超高速の光学変調に寄与していることを明らかにした。 これらの成果は、顕微ラマン分光法とバイアス印加ポンプ・プローブ法がグラフェンの超高速光学応答の評価に有用であることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェンは、層数によって電子状態が異なるため、熱フォノン・電子伝播のダイナミクスの理解には、まずは電子・格子結合定数の層数依存性や基本となる単層グラフェンの光学伝導度のフェルミレベル依存性などを明らかにする必要がある。本年度の成果により、ミクロンオーダーではあるが、グラフェンの電子・格子相互作用などに関する基礎的理解を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の最終的な目標は、ナノ空間でフォノンや電子の伝播を計測するシステムを開発することである。通常の顕微ラマン分光の空間分解能は、光の回折限界のためミクロンオーダーであり、ナノ空間へのアクセスは難しい。そこで、本研究課題の申請時に計画した、光・テラヘルツ(THz)駆動の走査トンネル顕微鏡(STM)技術の導入を図る。 超高真空下で動作する光・THz-STMの開発は、別のテストサンプルを使って開発中である。その進捗にあわせて、サンプルをグラフェン(あるいは周期的構造を持つグラフェン)に換え、光・テラヘルツ照射に伴う電子状態変化の計測に挑戦し、ナノ空間における伝播ダイナミクス計測の可能性を検討する。
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