2021 Fiscal Year Research-status Report
光捕集アンテナ構造を導入した人工網膜フィルムの開発
Project/Area Number |
19K22107
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
浅岡 定幸 京都工芸繊維大学, 材料化学系, 准教授 (50336525)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | 光電変換 / 人工網膜 / 励起子移動 / フォトダイオードアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 色素のバリエーション拡充とダウンコンバージョン経路の導入:親・疎水鎖の連結点にビピリジンを導入した後、金属イオンと反応させて錯体を形成させる従来の手法では、金属イオン種によってはPEO鎖の連結部が加水分解を受け、ブロック共重合体が得られない問題があった。そこで連結点に側鎖アジド基を導入したブロック共重合体を予め合成し、これに末端アルキンをもつ金属錯体をClick反応させる手法についても並行して検討を開始した。現在連結点部分の分子構造の最適化を行っている。 (2) 電荷分離サイトの導入:電子受容体または電子供与体の溶液にlBC膜を浸漬し、シリンダー部に選択導入する手法について検討した。電子受容体としてはメチルビオロゲンを、電子供与体としてはCuIの導入を試みたところ、いずれの場合にもミクロ相分離構造を乱すことなく導入できることを確認した。 (3) 光電変換特性の評価:光照射ON/OFF時のlBC膜表面に対して、導電性チップを用いた走査プローブ顕微鏡測定(KFM測定)を行うことにより、表面電荷のマッピングを試みた。PEOドメインにメチルビオロゲンを導入した薄膜と未導入のlBC膜では、光照射のON/OFFに伴う変化は観測できなかったのに対して、CuIを導入した薄膜では、光照射OFF時に比べON時には明確な電荷量の増大が確認された。なお局所電荷の面内マッピングについては、探針の先端の形状が相分離構造のサイズに比べて大きく、電荷の蓄積に伴うノイズの影響もあり、現在のところ十分な分解能が得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分解能を評価するために必要となるSPMに装着する電気化学オプションが製造中止となったため、メーカーの研究所所蔵の機器による測定に頼らざるを得なくなった。このため測定に大幅な遅延が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 色素のバリエーション拡充とダウンコンバージョン経路の導入:側鎖アジド基をもつブロック共重合体を用いた合成経路によれば、Click反応自体に反応条件の制約が少ないため、様々な種類の色素の導入が可能となる。今後は既存のポリマーに加え、本手法によってバリエーションの拡充を進める。 (2) 電荷分離サイトの導入:電子供与体については、CuIを導入した薄膜において、光照射による有意な表面電荷の増大が観測されたことから、これを中心に検討を進める。電子受容体については、(1)の側鎖アジド基をもつブロック共重合体を利用することによって、C60の導入を検討する。 (3) 光電変換特性の評価:表面電荷のマッピングについては、現状で分解能が不足していることから、探針を含めた測定条件の見直しにより、分解能の向上を目指す。また、自研究室所蔵の装置へのオプションの導入が不可能になったことから、現状のメーカーの研究所の装置の他にも借用可能な装置がないか、メーカーに探索を依頼している。これら複数の装置を使用することで、研究の遅延を取り戻す予定である。
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Causes of Carryover |
SPMに装着する電気化学測定オプションがコロナ禍の影響による予備実験不足により仕様決定が遅れた結果、装置自体の生産が中止となった。今後は当該装置を所有するメーカーの研究所および他の研究機関において測定を継続することによって研究を進める予定。これに係る依頼測定費や顕微鏡消耗品費(導電性探針を含む)を除く残額については、自研究室所蔵のSPMの分解能を向上させる必要があるため、より狭範囲のスキャナの導入に使用する予定。
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Research Products
(2 results)