2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22116
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
河合 武司 東京理科大学, 工学部工業化学科, 教授 (10224718)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ナノワイヤー / キラリティ / ソフトテンプレート |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に(1) 様々なキラルナノワイヤーの合成とキラル光学特性の評価に挑戦した。まず他金属のキラルナノワイヤーの合成について検討した。金と同じ還元手法が使える銀・白金・パラジウムの前駆体を用いてキラルナノワイヤーの合成を様々な条件下で試みた。しかしながらナノワイヤーは合成できず、ナノ粒子が生成した。 そこで次にナノワイヤーのピッチ制御について検討した。キラルAuナノワイヤーは両親媒性化合物(C18AA)とキラル源のHSAから構成されるらせん状ナノファイバーをテンプレートとして合成するが、C18AAのアルキル鎖に炭素-炭素2重結合を導入した誘導体(OleylAA)を合成して、ナノファイバーの形成能について調べた。OleylAAを用いてもC18AAと同様のらせん状ナノファイバーが得られること、またナノファイバーのらせんピッチはC18AAのものより短くなることがわかった。さらに、長鎖にアミド結合を有する誘導体(C17AMAA;2種類)でも、らせんピッチの異なるナノファイバーが作製できることがわかった。すなわち、C18AA誘導体を用いればナノファイバーのらせんピッチが精密に制御できることを明らかとした。さらに、得られたナノファイバーを鋳型としてらせん状Auナノワイヤーの合成を試みた。その結果、OleylAA系からは、C18AA系よりらせんピッチの短いAuナノワイヤーが生成することがわかった。一方、アミド結合を導入したC17AMAA系ではAuナノワイヤーが合成できなかった。これは、C17AMAA系では、ナノファイバー作製にエタノール添加を要したためである。OleylAA系で合成したAuナノワイヤーの円二色性スペクトル(CD)を測定した結果、C18AA系のそれとほぼ同じであった。すなわち、CDピークはAuナノワイヤーのらせんピッチにはほとんど影響されないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標は(1)様々なキラルナノワイヤーの合成とキラル光学特性の評価であった。キラルナノワイヤーのテンプレートであるナノファイバーのらせんピッチがC18AAの分子構造を変化させることで制御できることを実証した。さらに、ピッチの異なるらせん状Auナノワイヤーの合成にも成功し、その円二色性特性についても解明した。したがって、本年度の目標はほぼ達成できたことから、ほぼ順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では主に、(1)様々なキラルナノワイヤーの合成とキラル光学特性の評価、(2)有機色素の被覆による光学特性の制御、(3)二次構造の自在制御法の開発について挑戦することである。今後、キラルナノワイヤーの合成をさらに発展させるために、C18AAとHAS の混合比やHASのD体とL体の混合比を変えてピッチの異なるナノファイバーを作製し、それを鋳型に利用したらせん状Auナノワイヤーの合成に挑戦する。 また、(2)のついてはナノワイヤー表面にキラルでない色素分子をキラルに配列させて、色素由来のキラル光学特性を発現させた光学材料を開発する。色素としてはアゾベンゼン基を持つ分子を用いる。 (3)については、らせん状ナノワイヤーはC18AAの分子集合体に沿って形成される。このことは、望みの二次構造の金ナノワイヤーを作製するには、C18AA分子を基板上にその通りに配列させればよいことを示している。注意すべきは、C18AAの親水基(金の成長部位)を最表面に出させることである。そこで、C18AAの親水基が最表面に現れた種々の分子配列を構築し、金ナノワイヤー作製の最適化を行う。さらにAFM探針による描画法(Dipペン)などを用いて作製したC18AAの1次元配列上に金ナノワイヤーの合成を試みる。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、(1)旅費として計上していたが学内予算で賄うことができたため(2)その他で計上していた電子顕微鏡の維持費(修理費を含む)が生じなかったため、および(3)論文投稿費が学内から補助されたためである。 繰り越し金は、試薬・薬品類の消耗品として使用する予定である。
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Research Products
(8 results)