2019 Fiscal Year Research-status Report
マルチプローブ顕微鏡技術を用いた発生胚メカニクス計測法の開発
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19K22122
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡嶋 孝治 北海道大学, 情報科学研究院, 教授 (70280998)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞力学 / プローブ顕微鏡 / 発生胚 |
Outline of Annual Research Achievements |
受精卵の胚形成において、発生胚を構成する細胞の力学特性(メカニクス)が胚形成に重要な役割を果たしていると考えられている。細胞メカニクスは、細胞間に働く「張力」と細胞固有の変形能を表す「弾性率」に大別できる。張力測定では、レーザーアブレーションにより発生胚内に力の不釣り合いを誘発して計測する。しかし、この方法は発生胚を不可逆的に破壊するため、「張力」のタイムラプス測定が原理的に不可能という問題があり、発生過程の張力挙動は未知である。初年度は、原子間力顕微鏡(AFM)の応力緩和測定法と往復フォースカーブ測定法を用いて、発生胚の弾性と粘性とを精密に計測する技術の開発した。その結果、1細胞計測には用いられているAFMの応力緩和測定法をダイナミックに時空間変動する発生胚への適用が初めて可能になった。そして、AFMのFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)プログラムを改良することにより安定な制御が可能になった。AFM応力緩和測定法は粘弾性の精密計測ができる利点があるが、一方で、測定にやや時間がかかるという問題があった。これは、時間変動する発生胚にとっては問題なることがある。そこで、粘弾性を評価できる往復フォースカーブ測定法を発生胚の計測に適用した。さらに、発生胚の弾性が細胞単位で不均一であることを決定づける詳細なデータの取得に成功した。また、マルチプローブ顕微鏡の発生胚計測のために、発生胚の基本構造である単層細胞の運動性と電界依存性を評価し、その形態変化に関する知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
原子間力顕微鏡の応力緩和測定法と往復フォースカーブ測定法を用いて、発生胚の弾性と粘性とを精密に計測する技術の開発に成功した。本手法は、マルチプローブ顕微鏡を用いた発生胚計測の基礎となる。
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Strategy for Future Research Activity |
この力制御による細胞形状の変化が、細胞間に働く張力に相当する。薬剤添加前後のAFMマッピング測定から、発生胚の張力と弾性率の時空間挙動を同時に評価できる計測技術を確立する。
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Causes of Carryover |
天候悪化等のため動物サンプルの購入が予定よりも下回ったため、次年度使用額が生じた。次年度は、動物サンプルの購入数および購入回数を増やす計画をしている。
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