2019 Fiscal Year Research-status Report
Spin transport phenomena in Dirac magnets and their applications for spintronics
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19K22124
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 雄毅 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (10633969)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ディラック磁性体 / スピントロニクス / スピンホール効果 / トポロジー / ベリー位相 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、スピントロニクス材料として新しい種類のトポロジカル磁性体である「ディラック磁性体」を提案する。歪みの印加により発生すると期待される、ディラック点のベリー位相磁場の効果によるスピンホール効果を観測することを目指す。 今年度は、ディラック磁性体の候補であるγ相FeMnの薄膜に焦点を当てて研究を行った。γ-FeMnでは、強結合近似のもとでフェルミ準位付近にスピン縮退したディラック構造が見られ、歪みによりスピンホール効果が観測されることが期待されることが複数の理論論文で指摘されていた。γ相のFeMnはfcc構造の金属上でしか成長しないことが知られているため、CuやNi-Fe合金などのシード層の上に高温スパッタ法で単結晶薄膜試料を作製した。基板としては、歪み効果を調査するため、圧電材料基板や柔軟性のあるカプトンシートなどを使用した。 圧電材料基板上に作製したFeMn/Ni-Fe薄膜試料に対して、本課題で導入した雰囲気制御磁場中アニール炉を用いて、歪みと外部磁場を同時に印加した状態でアニールした。アニールによりカイラルドメインを制御できると期待した。アニールした試料に対して、室温でスピンゼーベック効果/異常ネルンスト効果測定を行い、スピンホール効果の大きさを計測した。Ni-Fe薄膜の厚さを調整すると、測定された熱起電力信号に交換バイアス効果が見られることが明らかになった。これは、歪みと外部磁場を同時に印加したアニールにより誘起された現象であることを対照実験により確認した。興味深いことに、交換バイアスの大きさは、これまでFeMn/Ni-Fe系で報告された値の中でも最大値に近い値であった。しかし一方で、当初狙っていた歪みによる信号強度の制御は、測定精度の範囲内で観測されなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ディラック磁性体の開発とスピントロニクス応用という挑戦的なテーマであり、当初計画した通りには研究は進んでいないが、副産物として予期しなかった興味深い結果が得られ始めている。導入した設備も有効に使って新しい結果が生まれている。実験技術は確立され、来年度に向けて知見が集まってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、今年度得られた実験結果の内、興味深い部分にフォーカスして研究を発展させる。加えて、今年度得られた知見を活かして新しいディラック磁性体候補物質での研究を行う予定である。また、学会等で積極的に研究成果を発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染拡大により、年度末に予定していた出張がキャンセルとなったため。来年度に研究成果を積極的に発表する予定である。
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Research Products
(3 results)