2019 Fiscal Year Research-status Report
生きた細胞内部のナノ動態を直接可視化するナノ内視鏡技術の開発
Project/Area Number |
19K22125
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福間 剛士 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90452094)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 細胞観察 / ナノ内視鏡 / 3次元AFM |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が開発してきた3次元原子間力顕微鏡(3D-AFM)技術を発展させ、生きた細胞の内部の構造や動態を直接観察することのできるナノ内視鏡技術を開発する。この方法では、長さ数マイクロメートル、直径200 nm以下のロングナノプローブを集束イオンビーム(FIB)加工装置で作製する。そして、それを細胞の内部を含む3次元空間内で走査し、その間に探針に印加される力を記録することで、3次元力分布像を得る。このとき、探針は細胞膜を貫く際や、細胞内の構造と相互作用する際に力を受けるため、力分布像には細胞内の構造情報が含まれる。 本年度は、まず、FIBによるロングナノプローブの作製法の確立に取り組んだ。その結果、最大直径150 nm以下で先端径10 nm程度の細長いニードル状のナノプローブを再現性良く作製する方法を確立できた。さらに、この改良により、細胞膜を貫いて探針を細胞内へと挿入する操作を再現性よく実現できることを示した。このプローブを3次元原子間力顕微鏡(3D-AFM)と組み合わせることで、生きた細胞内の細胞核やアクチンフィラメントなどの構造を3次元観察することを可能とした。また、細胞内に探針を挿入し、細胞膜や核膜の裏打ち構造を直接ナノスケールで観察することにも成功した。これは超解像光学顕微鏡でも得ることのできない高い分解能での計測であり、従来技術では観ることのできなかった細胞内でのナノ動態の可視化が可能であることを示した。さらに、これらの細胞内2次元・3次元計測の後に、細胞が死なないことも蛍光顕微鏡観察により確認し、細胞への侵襲性は細胞に致死的なダメージを与えないレベルに抑えられていることも示した。これらは、ナノ内視鏡観察の実現可能性を示す、大きな成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題では、初年度にナノプローブの開発、2年目にナノ内視鏡観察の原理検証、3年目にそれを応用した細胞内動態計測を進める予定であった。それに対して、初年度の研究において、ナノプローブの基本的な作製方法を確立し、さらに次年度に行う予定であったナノ内視鏡の原理の実証も達成した。したがって、当初の計画以上に研究が進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ナノ内視鏡観察によって得られた3次元像と、共焦点蛍光顕微鏡像とを比較し、ナノ内視鏡によって、細胞内のどのような構造が観察できるのかを示す。観察対象としては、これまでに確認された細胞核とアクチン繊維に加えて、ミトコンドリアやERなどのオルガネラの計測を進める。一方、細胞内2次元観察のターゲットとしては、以下の2つの課題に挑戦する。第一に、細胞核表面に局在する核膜孔とそれを通して行われる膜内物質輸送現象の観察を目指す。第二に、骨芽細胞の基底面の内側において、骨形成時にどのような動的な構造変化が生じているのかを直接ナノ内視鏡観察によって検証する。
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Research Products
(8 results)