2020 Fiscal Year Research-status Report
生きた細胞内部のナノ動態を直接可視化するナノ内視鏡技術の開発
Project/Area Number |
19K22125
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
福間 剛士 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 教授 (90452094)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 原子間力顕微鏡 / 細胞観察 / ナノ内視鏡 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生きた細胞内部に探針を挿入して、そこで原子間力顕微鏡(AFM)観察を行う、ナノ内視鏡観察技術の開発に取り組んだ。これまでに、集束イオンビーム加工装置を使い、シリコンニードル探針や、カーボン堆積探針などの細長い探針の作製方法を確立した。また、それらを使って、生きた細胞内でのAFM観察にも成功している。具体的にはHeLa細胞内部の細胞核や、線維芽細胞内部のアクチン繊維の3次元構造の可視化や、線維芽細胞の基底膜の裏打ち構造を細胞内から直接観察することにも成功している。また、アクチン繊維の観察については、共焦点顕微鏡画像との直接比較を行うことで、AFMによって可視化されている繊維状の構造がアクチン繊維であることを確認している。一方で、探針の挿入が細胞に与える影響を知るために、Calcein-AMやPIなどの標準的な細胞のviabilityを確認するための蛍光試薬を使い、細胞が計測後も生命活動を維持していることを確認した。これは、細胞内の2次元・3次元観察の両方において確認している。また、これに加えて、3次元観察後に細胞が正常に分裂することも確認している。今後、Caイオンなどのストレス応答因子の濃度の探針挿入、走査による変化もモニターすることを計画している。また、ナノ内視鏡技術ならではの応用としては、細胞核の硬さ測定の実験に取り組んでいる。これまでに、がんの進展に応じて細胞の硬さが柔らかくなり、結果として細胞遊走性、浸潤性が増し、がんの転移などにつながることを示されてきた。一方で、サブ細胞レベルでの細胞メカニクスの研究は、これまで手法がほとんどなく、知見がほとんどない。そこで本研究では、がんの悪性化度の大きく異なる細胞に対して、細胞表面だけでなく、細胞核の硬さ変化を調べることで、より詳細ながん化と細胞力学物性の関係を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
細胞内の観察を実現するだけでなく、細胞の生命活動への影響の詳細な解析、細胞内力学物性とがん化との関係など、当初の計画以上に研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発については、探針の最適化をさらに進める。これまでに、探針の形状や走査速度に応じて、探針の挿入挙動がどのように変化するかを明らかにしてきた。今後は、探針表面の親水化処理や防汚コート処理によって、どのように挿入特性が変化するのかという点を明らかにする。可視化研究については、細胞内の何が見えて、何が見えないのか、という点を明らかにする。これまでに、細胞核、アクチン繊維の観察を実現してきた。今後、それ以外に何が観察できるのかを一つ一つ検証していく。具体的には、細胞核表面の核膜孔複合体(NPC)、基底膜とアクチン繊維を結合するfocal adhesionなどの可視化を計画している。また、そのために、STED方式の超解像顕微鏡とナノ内視鏡との複合化を進める。すでに、AFMヘッドは複合化しており、お互いに独立には動作するが、有機的に連動させるためには、自作コントローラでの統合的制御の実現が必要不可欠である。このあたりの開発に注力する。また、応用にあたっては、肺がん細胞(PC9)の悪性度の違いによる細胞力学物性の変化を観るために、細胞表面の硬さだけでなく、細胞核の硬さの変化も同時に可視化する。これにより、これまで細胞レベルに限られてきた細胞力学研究をサブ細胞レベルの研究へと発展させるとともに、がん悪性化のメカニズムに関するナノレベルの知見を得る。
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Research Products
(7 results)