2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of pulsed laser deposition using free electron infrared laser
Project/Area Number |
19K22132
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
中嶋 宇史 東京理科大学, 理学部第一部応用物理学科, 准教授 (60516483)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 赤外自由電子レーザー / パルスレーザー堆積法 / アブレーション / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、赤外自由電子レーザー(Free electron laser: FEL)を光源とした新たなパルスレーザー堆積法を確立することで、有機物薄膜を高品質に成膜させる技術を創出することにある。従来、酸化物や金属薄膜の成膜において、エキシマレーザー(波長193 nm, 248 nm)やNd:YAGレーザー(266 nm, 355 nm)を光源としたパルスレーザー堆積法が用いられ、結晶性が精緻に制御された高品質膜が得られることが知られている。一方で、同手法を有機物に対して用いた場合、分子構造を破壊することなく成膜することは極めて困難である。FELは、加速された電子ビームをアンジュレーターによって波長を可変し出力可能である。特定のレーザー媒質を必要としないことから、他のレーザーでは得ることが困難な波長域での照射が可能である。さらにピコ秒領域での短パルスを高出力で発振可能であるため、材料の格子振動のエネルギーが熱として散逸するよりも短い時間で特定のエネルギー吸収を実現することができる。即ち、照射対象となる有機材料の分子内および分子間の結合を選択的に分離することが期待されるため、有機材料の構造を照射条件によって任意に制御可能な技術として発展できると考えている。 これまでの研究で、東京理科大学赤外自由電子レーザーセンター内にある装置を用いて、真空度を制御した専用チャンバー内に、赤外自由電子レーザーを導入し、内部に設置された有機圧電材料であるポリフッ化ビニリデンPVDFに照射、アブレーションを誘起することを確認した。波長7.12μm,7.83μm,8.47μm それぞれにおいて、FEL照射による反応性の違いがアブレーション痕から確認され、またレーザーの照射エネルギー密度が高くなると中心部の反応性が高くなることが明らかとなった。本技術を用いた成膜を引き続き継続して行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度は、当初の計画で実験を予定していた東京理科大学赤外自由電子レーザーセンター内の装置が運転を停止しており、実験の推進が困難であった。またコロナウィルスの感染拡大のため、学外での赤外自由電子レーザー施設の利用にも制約があった。薄膜での成膜対象としているフッ化ビニリデン材料の赤外吸収スペクトルの分析ならびに、赤外自由レーザー照射後のアブレーション痕の解析、さらにはレーザーアブレーション用の真空チャンバーの設計の見直しを進めてきた。このような理由により、進捗状況としては計画よりも遅れており、2020年度が最終年度であった本研究を一年延長し、研究を継続することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画で実験を予定していた東京理科大学赤外自由電子レーザーセンターは運転を停止しており、2021年度は京都大学エネルギー理工学研究所内の赤外自由電子レーザーKU-FELの利用を予定している。KU-FELは、国内有数の赤外自由レーザーセンターの拠点であり、照射波長域も東京理科大学のFELの範囲をカバーしており、実験遂行には申し分ない。施設利用の手続きを行い、本年度は合計10回前後の照射を予定している。この期間内において、有機材料種、照射波長、照射フルーエンス、照射回数を変えて、アブレーション堆積を行い、得られた試料の構造、物性計測を系統的に進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度は当初の計画で実験を予定していた東京理科大学赤外自由電子レーザーセンターの装置が運転停止であったため、実験を推進することができず次年度使用額が生じた。計画を変更し、2021年度に実験を引き続き進める予定である。
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Research Products
(5 results)