2019 Fiscal Year Research-status Report
力検出を用いた近接場ラマン光学顕微鏡の単原子観察条件の研究
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19K22144
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
李 艶君 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50379137)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 近接場顕微鏡 / ラマン |
Outline of Annual Research Achievements |
ラマン効果は、分子や結晶の振動準位や回転準位などの分光に広く用いられている現象である。これまで物質近傍に局在するラマン散乱光(近接場ラマン光)を検出し、回折限界を超える近接場ラマン顕微鏡を実現しようとする試みが行われてきた。しかし、金属探針の先端に光を照射し増強電場を発生させ、近接場ラマン光を伝搬光に変換する方式では、原子分解能(0.2nm以下)での観察は困難であった。 本研究は、物質表面の構造と振動準位を原子分解能で観察可能な次世代の近接場ラマン光学顕微鏡を開発すると共に、その原子分解能観察の条件を解明することを目的とする。当該年度は、下記の課題について研究を実施した。 1)ラマン光を高感度に測定するために制限している因子(例えば、ラマン光から力への変換効率や、レーザー光の線幅、カンチレバーの変位検出計の雑音、カンチレバーのバネ定数や振動振幅などの測定条件)を理論的に検討し、高感度測定のための条件を求めた。 2)ラマン光を高分解能に検出するためには、現有の極低温環境で動作する光誘起力顕微鏡において、バックグランド光を低減した光照射系を実現することが重要である。そこで、不要反射が極限まで低減した光照射系を実現した。 3)力を高感度・高分解能に測定するため、ばね定数が大きく、共振周波数の高いカンチレバー(k=1,500N/m,f=1MHz)を導入した。カンチレバーの熱振動が減少し、力検出感度が向上した。また、小振動振幅(0.1nm程度)での動作により、探針・試料間の相互作用時間が長くなり、力の検出感度が一桁以上向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに順調に研究が進展している。具体的には、以下の3つの研究課題について検討し、妥当な成果を得ているためである。1)ラマン光の最適観察条件の理論的検討、2)バックグランド光を低減した光照射系の実現、3)力検出の超高感度化・超高分解能化。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の具体的研究計画は下記のようになっている。 1)ラマン光を効率的に励起するため、ギャップモードによる増強電場を用いる。試料としては、原子レベルで清浄で平坦な表面が容易に得られる銀の表面上に吸着させた銅フタロシアニン分子を取り上げる。金属探針としては、銀コート探針を用いる。 2)ラマン光を最も高感度に測定するための条件を実験的に検討する。具体的には、ラマン光による力の探針・試料間距離依存性を測定し、数値計算により、様々なカンチレバーの振動振幅に対する力の探針・試料間距離依存性を導出する。この距離依存性に対して信号対雑音比を求め、最も感度の良くなる振動振幅を求める。 3)フタロシアニン分子のラマン光の分布を原子スケールで超高感度・超高分解能に観察できることを実証する。また、この分子どのように撮像されるかを理論的・実験的に検討し、画像化機構を解明する。
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