2019 Fiscal Year Research-status Report
Radiation integrity of strengthening factor in steels
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19K22152
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 弘亨 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40343925)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 炭化物 / 酸化物 / 照射誘起 / イオン照射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、金属/炭化物(酸化物)2層界面における新しい照射誘起型の固相反応現象に対して、本研究ではより精緻で定量的な理解を深めるため実験手法を開発し、特に微細組織の観点で定量的な評価法として確立することを目的としている。 初年度の成果概要としては、酸化物分散強化鋼中の酸化物微粒子、鉄鋼材料中のM23C6型炭化物を対象として、それぞれの照射による不安定化現象について知見を整理し、照射誘起界面固相反応に係る実験手法について検討した。 鉄鋼中酸化物はサイズがnm程度であり、集束電子照射により成長、収縮をランダムに繰り返しつつ、最終的に収縮消滅した。成長収縮の度合いは電子ビーム中心からの距離に応じ、中心から離れるほど成長の頻度が高く、さらに電子集束度が高いほどこの現象が顕在化する。これはビーム強度分布に比例して形成される空孔の濃度分布により、空孔型拡散が促進されることによるものと理解される。このことから、酸化物微粒子が照射中にランダムウォークする可能性について詳細を解析したが、その兆候は明確には検出できなかった。 炭化物微粒子については、鉄鋼の脆化因子となるラーベス相が炭化物近傍に形成され、M23C6の非晶質化が生じると考えられている。このプロジェクトにてこの形成への照射影響について調査した。STEM-HAADF法により高分解能Zコントラスト格子像観察を行い、結晶格子中のタングステンの位置が照射により変化することが影響する可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の成果概要としては、酸化物分散強化鋼中の酸化物微粒子、鉄鋼材料中のM23C6型炭化物を対象として、それぞれの照射による不安定化現象について知見を整理し、照射誘起界面固相反応に係る実験手法について検討した。 鉄鋼中の酸化物微粒子の照射下挙動については概ね当初予定通りの成果を得ている。炭化物の照射誘起非晶質化挙動に対する理解は大幅に進捗し、タングステンの影響など予測していなかった成果を得ることができている。概ね順調に進捗していると評価される。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン照射法と電子照射法を活用した照射誘起界面固相反応解明研究を継続する。STEM-HAADF法の適用と深化、新たな実験系の構築など先進的な課題に引き続きチャレンジする。
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