2019 Fiscal Year Research-status Report
キラリティーの超高感度計測:ヘテロダイン検出キラル電子和周波発生分光法の開発
Project/Area Number |
19K22159
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥野 将成 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00719065)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | キラリティー / 非線形分光 / 電子状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子状態を対象としたキラル電子和周波発生(ESFG)分光とヘテロダイン検出(Heterodyne-detected)を組み合わせたHD-キラルESFG分光法を開発することである。狭帯域光と超広帯域光の和周波信号を得、それをヘテロダイン検出することを目標としている。初年度である本年度は、超広帯域光の発生を行い、それを評価することを行った。 ピコ秒パルスレーザー(15ps, 数uJ)の出力をフォトニック結晶ファイバー(PCF)へと導入することで、近赤外超広帯域光を得ることを目指した。1064 nm, 15 ps, uJ程度の入射光を用いるため、1 um付近に0分散があるPCFを用いた。まず、コア径が5 um程度のファイバーへのカップリングを行い超広帯域光の発生を目指したが、十分なファイバー中の光伝搬を得ることができなかった。 次に、コア径の大きなラージモードエリア(LMA)PCFを用いた超広帯域発生を行った。レーザーのビーム径およびレンズの焦点距離などを考慮することにより、コア径が25 umのLMA-PCFから可視域までスペクトルが伸びた超広帯域発生を確認することができた。しかし、10 mのファイバーでは十分な透過率を得ることができなかった。これは、コア径の大きいものであればレーザーのカップリングは容易になるものの、非線形性が低下して十分な超広帯域光が得られなかったことが原因の一つとして考えられる。また、長さも10 mと必要以上にながいものを用いていたのではないかと考えられる。光源の繰り返し周波数およびパルスエネルギーの最適化を行う必要があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ファイバーへのカップリングなど、超広帯域光発生に予想以上に時間がかかったことが原因として挙げられる。これは、フェムト秒レーザー・サブナノ秒レーザーと異なり、ピコ秒レーザーを用いた超広帯域発生の報告が少ないため、ファイバーについて試行錯誤する必要があったためである。また、ファイバーへの損傷を考慮し、ピコ秒レーザーの最適な出力を模索するためにも時間を必要とした。超広帯域光が発生すれば、それを分光利用することには困難がないことが予想されるため、安定かつ強力な出力を持つ超広帯域光をいかにしてピコ秒レーザーから得るかが今後の課題となる。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、既に報告されているラージモードエリア・フォトニック結晶ファーバー(LMA-PCF)とピコ秒パルスレーザーを組み合わせた超広帯域光発生について、ファイバーおよびレーザーのパラメータを最適化することを行う。特に、LMA-PCFについてコア径を小さくし、偏波保持の特性のものを用いることで、効率的な超広帯域発生を実現し、非線形分光へと応用できると考えている。また、LMA-PCFの長さを1 m程度とすることで、ファイバー中における光損失を低下させる。
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Causes of Carryover |
超広帯域光発生が順調に進まなかったため、光学系を構築するための支出が減ったためである。ただし10万円以下と少額であり、次年度に光学部品を購入するために使用する。
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Research Products
(3 results)