2022 Fiscal Year Annual Research Report
DESI・冷却イオン分光によるコンフォメーションイメージング法の確立
Project/Area Number |
19K22163
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
石内 俊一 東京工業大学, 理学院化学系, 教授 (40338257)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2023-03-31
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Keywords | コンフォメーション解析 / 質量分析イメージング / DESI / イオントラップ分光 / 質量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)法と冷却イオントラップレーザー分光法を組み合わせ,質量イメージングに分光情報を付与することで,分子種のみならず,そのコンフォメーションを同定できる新たな手法を創出することを目的としている。本年度は以下の内容を実施した。 エアーブラシ塗布によって作成したモデル試料に対して,エレクトロスプレーを吹きつけ,DESI信号を確認した。検出されたイオンを冷却イオントラップに導入し,波長可変レーザーを照射して赤外スペクトルを測定した。信号強度が弱く,またふらつきが大きいため,コンフォメーション分布を定量的に議論するのは現状では困難であるが,現状の結果では,通常のエレクトロスプレーによって生成したイオンのコンフォメーション分布から特に変化は見られていない。原因としては,DESIで生成したイオンを真空中に導入する過程で室温ガスとの衝突により気相中で熱平衡状態となったためだと考えられる。 現状としては通常の質量イメージング以上の情報は得られていない。イオン取り込みの高感度化は無論のこと,DESIで取り出されたイオンを異性化させずに真空中へ導入する方法を検討する必要がある。これまでの研究では,エレクトロスプレーイオン化(ESI)法で生成したイオンのコンフォメーション(異性体)分布は,真空中へイオン導入する際のガスとの衝突過程に影響されることが分かっている。ガスの種類も重要であり,特に,湿度,即ち水蒸気の有無が強く影響を与える。このような観点から,雰囲気を精密に制御できるDESIステージの設計が不可欠であり,今後の課題である。 また,この知見は,イオンの構造がどのような状況を反映しているのかということに対して重要な示唆を含んでおり,本研究で提案した方法の実現だけでなく,ESI法を用いた従来の研究に対しても学術的に重要な知見が得られたと言える。
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Research Products
(5 results)