2020 Fiscal Year Annual Research Report
π電子系機能物質化学の革新を招く供与性π結合エンジニアリング
Project/Area Number |
19K22165
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 供与性π結合 / ホウ素 / 窒素 / 燐光 / 芳香属性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ホウ素-窒素(B-N)結合において形成される供与性π結合を合目的的にエンジニアリングするための基礎化学を確立することを目的とする。B-N 結合を組み上げシクロブタジエン(CBD)やポリアセチレン骨格を構築し、その構造・物性検討を通じて、供与性π結合の「形成を制限する」「方向を制御する」といった、自在な操作を可能にする分子技術を開発することを目指して研究を実施した。 本研究を通じて、B2N2四員環から構成され、空気・水にも安定な無機CBD誘導(BN-CBD)体を合成し、構造・発行特性を詳細に調査した。興味深いことにBN-CBDは、酸素脱気下で、室温溶液状態でもマイクロ秒オーダーの寿命の青色発光を示した。発光寿命の温度依存性を解析することで、この長寿命青色発光は燐光であることを明らかにした。燐光発光波長は蛍光波長とほぼ同一であり、励起一重項(S1)と三重項(T1)状態のエネルギー差が極めて小さいことが示唆された。そこで、励起状態計算により評価したBN-CBDのS1およびT1状態のエネルギー差はわずか0.1 eV程度であり、実験結果と一致することが明らかになった。さらに、交換交差の効率を計算により評価し、BN-CBDがS1状態からT2状態に項間交差した後でT1状態に内部転換するプロセスを経て燐光発光すると結論づけた。 BN-CBDの励起状態芳香族性についても、Isomerization Stabilization Energy、Multicenter Index、Electron Density of Delocalized Bonds、NICS、ACIDなど、エネルギー的、電子的および磁気的な指標に基づき評価した。その結果、T1状態でBN-CBDはCBD類似した正方形のジオメトリーをもつものの、CBDとは対照的に励起状態芳香属性を示さないことを明らかにした。
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Research Products
(6 results)