2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22167
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
阿波賀 邦夫 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (10202772)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | フラットバンド / トリプチセン / バンドフィリング制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、C3対称性をもつ分子がハニカム格子に結晶化すれば、必然的にDirac coneやフラットバンドが形成されることを見出している。本研究ではこの物質設計指針に従い、C3対称性をもつ分子骨格としてトリプチセンを選び、ドナーやアクセプター性、あるいは金属イオンへの配位能をもつさまざまな置換基を導入しながら、分子性ハニカム格子の合成すを目指した。 本年度は、拡張されたπ共役糸と電子受容体能力をもつ、フェナジン部位をトリプチセン骨格に付加したTrip-Phzを合成した。溶媒からの再結晶で得られた単結晶の構造解析を行ったところ、フェナジン部位間のファンデルワールス相互作用によりハニカム格子が形成されることが分かった。さらに層間では CH…N 水素結合によってハニカム骨格が重なりあい、結果として、ハニカム格子に垂直に、直径 1 nm 程度の太い1次元(1D)チャネルが形成されることが分かった。トリプチセンのπ平面はこのチャネルに平行であり、1Dチャネルの内面はアクセプター性をもつπ電子で覆われていると予想された。この構造から引き出される物性を探索するため、この結晶をさまざまな濃度のTTF溶液に浸したところ、電荷移動(CT)吸収体の出現/消失を伴いながら、可逆的にTTFがチャネル内に吸着/脱着されることが分かった。その吸収強度とTTF溶液濃度の関係はLangmuirの方程式でよく説明され、TTFのモノレイヤー吸着が示唆された。ホスト‐ゲスト間のCT相互作用の発現は初めてではないが、吸着量の自在制御はおそらく初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Trip-Phzのハニカム格子と、電荷移動相互作用をTTF分子吸着を見出した。この相互作用は弱く、ラジカル種の発生には至らなかったが、将来のフラットバンドへのキャリア注入に道を開く結果である。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の物質設計指針に沿ったトリプチセン分子を広範に合成し、より強いドナー性やアクセプター性をもつ系を生み出す。これによってフラットバンドへのキャリア注入を可能にする。
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Causes of Carryover |
Covid19により、参加予定の国際学会が中止になり、次年度に延期となったので、その旅費や参加費に充てるため。
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Research Products
(3 results)