2021 Fiscal Year Annual Research Report
有機半導体におけるスピン流の直接観測に向けた二重磁気共鳴計測手法の開発
Project/Area Number |
19K22172
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
鐘本 勝一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (40336756)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | スピン流 / 二重共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までにxバンドにて磁性層の一つを磁気共鳴により励起し、さらにもう一方をアンテナを利用した装置により励起する二重共鳴装置系の組み立てを行った。本年度はその完成した装置を用いて、二重共鳴の実験に主として取り組んだ。一般に強磁性(FM)層に隣接した非磁性(NM)層にて外部電源から電流を流すと電流と垂直な方向にスピン流が発生し、スピンホール効果と呼ばれるが、その際、NM層にて発生したスピン流がFM層に流入し、そのFM層のFMR信号強度を変化させることが知られている (スピン流誘起磁化反転)。本研究では、その現象をヒントに、FM1/NM/FM2の3層構造素子に対して、FM1層のFMR励起でスピン流を発生させ、そのスピン流がNM層を通過し、FM2層に到達したことをFM2層におけるFMR信号の変化から実測するFMR二重共鳴計測実験を行った。具体的には、共鳴位置が異なる2種のFM層に対して周波数を調整することで共鳴位置を同じ位置に調整し、一方のFM層励起を行った際の、もう一方のFM層の応答を観測した。得られた結果としては、FM1層の励起により、FM2層にてFMR信号の変化を示す応答が観測された。一方で、その信号の変化量がスペクトルの掃引速度で変化することがわかり、一方の励起を行った際の温度上昇の寄与が信号に重なっていることが示唆された。そのため、明確な二重共鳴応答が観測されたとは言えない結果となった。今回はNM層に、これまでスピンホール効果の観測例が報告されている白金を利用したが、明確な応答が観測できなかったのは、白金層でのスピン流伝搬距離が短いことが原因と考えている。
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Research Products
(3 results)