2020 Fiscal Year Research-status Report
光反応とも熱反応とも異なるコヒーレント分子振動励起反応を利用する新反応開発
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19K22174
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
岩倉 いずみ 神奈川大学, 工学部, 教授 (40517083)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | フェムト秒パルスレーザー光 / 極限的超短パルス光 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度にひきつづき、紫外10-fsパルスレーザー光を利用して2段階励起による反応を検討した。紫外10-fsパルスレーザー光は350~460 nmに広がるスペクトルを有している。この紫外10-fsパルス光を410 nmよりも短波長側に吸収を有するビアントリルに照射すると、電子状態が一光子励起される。電子基底状態においては二つのアントリル基のなす角は90度が安定であるが、電子励起状態においては二つのアントリル基のなす角は120度が安定である。紫外10-fsパルスレーザー光を照射すると、電子励起状態においてアントリル基のなす角が変化する回転運動が誘起される。このアントリル基の回転運動に伴う詳細な分子構造変化を、分子振動の瞬時瞬時の周波数変化を計測することで解析した。その結果、アントリル基の回転運動に伴い、中心の炭素ー炭素結合距離が変化する様子を可視化できた。そこで、2段階励起に用いる紫外10-fsパルスレーザー光、2パルス間の時間差を変化させた。時間差に依存した乖離生成物の生成量を1H-NMRを用いて解析した結果、時間差に依存して乖離生成物の生成量が変化した。乖離生成物の生成量の変化を電子励起状態における構造変化と比較したところ、中心の炭素ー炭素結合長が延びると生成量が増加し、中心の炭素ー炭素結合長が縮むと生成量が減少する傾向が示された。現在、乖離反応の詳細をポンプ・プローブ分光により解析するために、別途、広帯域検出光の発生を試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の計画通り、紫外10-fsパルスレーザー光を利用することで、2段階励起反応を検討した。その結果、分子振動のコヒーレント励起による「コヒーレント反応」を利用した反応制御の可能性が示唆された。 ただし、オンライン学会での未発表データの取り扱いが難しく、予定していた学会発表は次年度に見送ることにした。
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Strategy for Future Research Activity |
紫外10-fsパルスレーザー光を利用する2段階励起により誘起した乖離反応機構の詳細を解明するために、ポンプ・プローブ分光を試みる。現状のシステムでは検出光の帯域が狭いため、新たに広帯域検出光を発生させ、ポンプ・プローブ分光装置を構築する。
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19対策のための入構制限があった。長期間にわたる光学系の改良は難しいと判断し、光学系の改良を必要としないビアントリルの乖離反応を中心に検討したため、新規光学部品を購入しなかった。2021年度は乖離反応の詳細を解明するために新規にポンプ・プローブ測定装置を構築する。2021年度も入構制限の影響があると考え、当初の計画とは異なり、現状の光学系を改良せずに、繰り越した助成金を使用して光学部品を購入し、新たな光学系を増築する予定である。
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