2021 Fiscal Year Annual Research Report
光反応とも熱反応とも異なるコヒーレント分子振動励起反応を利用する新反応開発
Project/Area Number |
19K22174
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
岩倉 いずみ 神奈川大学, 工学部, 教授 (40517083)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | フェムト秒パルスレーザー光 / 極限的超短パルス光 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物の分子振動周期よりも閃光時間が短い10-fs光を用いると、振動位相を揃えて(コヒーレントに)分子振動を励起できる。コヒーレント分子振動励起による反応には、反応終了時まで誘起した分子振動コヒーレンスを保持でき、分子内振動緩和が回避されるという特徴があり、光反応とも熱反応とも異なる新奇反応を誘起できる。このコヒーレント分子振動反応を利用して、ビアントリルの光反応制御を検討した。 紫外-10-fs光励起・紫外-10-fs光検出装置、および、最終年度に構築した紫外-10-fs光励起・可視-fs光検出装置を用いて光反応過程を計測した結果、二つのアントリル基のねじれ運動と、中心の炭素-炭素単結合長との間に相関があることが示された。また、TD-DFT計算から、二つのアントリル基が平面に近づくほど、軌道の重なりが大きくなり、電荷移動反応が進行しやすくなることが示された。第一吸収帯には、中心の炭素-炭素伸縮振動が微細構造として現れるため、0-0吸収帯、0-1吸収帯を選択励起すると、光励起後の電荷移動反応性に影響が現れると推測した。実際に、選択励起を試みた結果、0-0吸収帯を励起するよりも、0-1吸収帯を励起する方が、電荷移動時定数が長くなることが示された(論文投稿中)。 また、2段階励起によるアントリル基の乖離反応制御を試みた。その結果、2パルス間の時間差に依存して、乖離生成物の生成量が変化した。乖離生成量の変化と、可視化した分子構造変化とを比較した結果、中心の炭素-炭素単結合長が伸びている時に2パルス目を照射すると、生成量が増加し、中心の炭素-炭素単結合長が縮んでいる時に2パルス目を照射すると、生成量が減少する傾向が示された(論文執筆中)。
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