2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Organic Semiconductors with Improving Carrier Mobility by Mechanical Stimuli
Project/Area Number |
19K22181
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
松尾 豊 名古屋大学, 大学院工学研究科, 教授 (00334243)
|
Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
|
Keywords | メカノクロミズム / 有機半導体 / フルオレン / アクリダン / 平衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
力により電荷移動度を変化させる有機半導体の学術的基盤を確立するにあたり,フルオレニリデン-アクリダンの2つの配座異性体の平衡について,深く研究した.2つの配座異性体の吸光係数を導出し,それに基づき紫外可視吸収スペクトルにより平行定数を決定した.続いて,温度可変紫外可視吸収スペクトルにより,温度を変化させると平衡が偏る現象について,アレニウスプロットから熱力学的パラメータを決定した.この平衡と熱力学的研究により,分子は孤立しておれば本質的には,吸熱的に折れ曲がり配座へ変化することを明らかにした. また,分子間力がはたらく固体中での振る舞いについても,高度なM06法による理論化学計算から,折れ曲がり配座がわずかながら安定になることを明らかにした.折れ曲がり型とねじれ型の2つの立体配座でほとんどエネルギーが変わらないことは,単結晶中に2つの立体配座が含まれる事実をよく説明している. さらに,フルオレニリデン-アクリダンを有機半導体として用いて,ペロブスカイト太陽電池に応用する研究を行った.メトキシ基をもつフルオレニリデン-アクリダンがペロブスカイト結晶を不動態化し,エネルギー変換効率を向上させることを明らかにした.具体的には,フルオレニリデン-アクリダンを用いないとき(17.0%)に比べ,用いた場合では変換効率が19.1%に向上した.今後はさらに有機薄膜デバイスに組み込んで,熱や応力をかけたときの特性の変化について研究する予定である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
混みあったアルケンを母骨格とするメカノクロミズム分子では,2つの立体異性体間の平衡がその色の変化の鍵となるが,例えば平衡定数を決定するなど,平衡について学術的に深く調べられたことがなかった.これに挑戦し,平衡定数を決定し,初めて平衡の実像を明らかにすることができた.さらに温度可変を行った測定から,熱力学的パラメータを決定し,熱力学的に折れ曲がり型が安定になることを示した.理論計算でも今までよりもより高度な手法を用いて,分子間力を考慮した計算を行い始めることができた.さらに,有機薄膜デバイスへの適用に関するも開始できて,研究は概ね順調に進展していると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
まず,フルオレン側とアクリダン側それぞれに,さらに化学修飾を行う予定がある.具体的にはフルオレン側のパイ共役系の中に窒素原子を導入し,この部分をより電子不足にする.また,アクリダン側に比較的大きな置換基を導入し,配座間の安定性に摂動が与えられるかどうか検討する.また,有機薄膜デバイスへ応用する研究をさらに進め,外部刺激によって特性を変化させるデバイスの創製を目指す.
|
Causes of Carryover |
本研究の前半,平衡の速度論的研究や熱力学的研究,また,理論計算を行っていたため,予算をあまり使わなかったが,後半は材料費がかかるデバイス研究がメインとなるので,後半で多く使うこととした.
|
Research Products
(4 results)