2019 Fiscal Year Research-status Report
Creation of Highly Electrophilic Divalent Silicon Scpecies for Small Molecules Activation
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19K22188
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
笹森 貴裕 名古屋市立大学, 大学院システム自然科学研究科, 教授 (70362390)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 高周期典型元素 / ケイ素 / 酸化還元 / シリレン / 小分子活性化 / 求電子性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、持続可能な社会の実現に向けた挑戦的な課題として、二酸化炭素および窒素の高効率変換反応開拓を見据えた研究基盤構築を行う。電気化学的な酸化還元により、ケイ素二価化学種シリレンの反応性を巧みに制御できる精密な分子設計を行い、窒素や二酸化炭素と反応するほど極めて高い求電子性を有する化学種「超求電子性シリレン」の創製に挑む。豊富元素であるケイ素の二価化学種「シリレン」を基本骨格とした。これまで合成されているシリレンとは異なり、シリレンのケイ素上の置換基として、かさ高いフェロセニル基を導入し、フェロセニル基の電気化学的な酸化により、シリレンの求電子性を究極まで高めたシリレンジカチオン種を創製する。すなわち、シリレン本来の求電子性・求核性を、電気化学的な酸化・還元により制御することを着想した。 令和元年度は、シリレンを単量体として合成・単離するために必要な、立体保護能を有するフェロセニル基(Fc*基=2,5-bis(3,5-di-t-butylphenyl)-1-ferrocenyl group)の臭化物(Fc*Br)大量合成法を確立した。さらに、中心ケイ素ユニットの高効率導入法を確立し、目的化合物の適切な前駆体と考えられる、かさ高いフェロセニル基(Fc*基)を二つ有するFc*2SiHClおよび、ビス(フェロセニル)ジクロロシラン(Fc*(Fc)SiCl2, Fc = ferrocenyl)を合成・単離することに成功した。非常にかさ高いクロロシランFc*2SiHClと各種塩基の反応によりシリレンの発生を試みたが、いずれの場合も未反応であった。現在、Fc*(Fc)SiCl2の還元反応によるビス(フェロセニル)シリレンの発生について検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸化還元制御可能なシリレンとしてビス(フェロセニル)シリレンを設計し、その合成検討を行っている。適切な立体保護基の探索と、適切な前駆体の選定、その合成法の確立に予想外に時間がかかり、目的化合物の合成・単離には至っていないものの、目的化合物の前駆体としてビス(フェロセニル)ジクロロシランを高効率で量合成する方法を確立し、その化合物同定を完了することに成功した。 予備的な検討ではあるが、この前駆体に対して、リチウムナフタレニドや単体ナトリウムを還元剤として作用させ、対応するシリレンの発生を試みた結果、捕捉反応等によりシリレンの発生を示唆する結果を得ている。特に、ビス(フェロセニル)シリレンは、ベンゼンやナフタレンとも速やかに反応してしまうほど高い求電子性を有していることが示唆され、当初の分子設計の妥当性を支持する結果を得ることができた。 これらの初年度に得られた知見を基盤として現在研究を進めており、概ね順調に進展しているということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度に合成法を確立した、ビス(フェロセニル)ジクロロシランの還元反応について、より詳細に検討し、目的とするビス(フェロセニル)シリレンの合成・単離に取り組む。予備的な検討結果から、目的とするシリレンは、ナフタレンやベンゼンなどの芳香族炭化水素化合物とも速やかに反応してしまうほど高い求電子性が高いことが予想されるため、合成条件下においてこのような試薬・溶媒を用いることは不適切であると考えられる。より不活性な飽和炭化水素などを溶媒として用い、発生したシリレンの単離に適した実験条件を模索し、シリレンの単離を目指す。 ビス(フェロセニル)シリレンを合成・単離し、電気化学測定などによりその酸化還元挙動を明確化する。その上で、酸化還元による求電子性の制御や、小分子活性化反応の進行について、より詳細な検討を行う。
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Causes of Carryover |
2019年度に予定していた国際学会、国内学会等が中止または延期となったため、2020年度の成果発表を行うために、2020年度の利用へと計画を変更した。また、大型機器の修繕、計算機の購入などが部品調達等の問題により大幅に遅延し、2020年度へと利用を持ち越す必要が生じた。
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