2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of single-layer heterospin honeycomb nanosheets
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19K22197
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
草本 哲郎 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 准教授 (90585192)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ラジカル / 銅錯体 / 二次元 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、架橋配位子として機能する安定有機ラジカルを用いてグラフェンと同様のハニカムスピン構造を形成し、さらにその辺の中心に磁性を有する金属イオンを導入する。特徴的なスピン構造ならびにラジカルと磁性金属イオン間の有効な磁気相互作用に基づき、グラフェンでは実現困難な磁気特性や電気特性を示すヘテロスピン金属錯体を創製する。 本年度は、二次元ハニカム構造の形成に必要な三角形型安定ラジカルの合成に成功した。このラジカルを配位子として種々の金属イオンとの錯形成反応を試みたところ、銅イオンを用いることで新物質を単結晶として得ることができた。X線構造解析により、この物質が期待通りの二次元ハニカム構造を有する金属錯体であることを見出した。この錯体の磁気的性質を調べたところ、ラジカルと銅イオンのスピン間には強磁性的な相互作用が働くこと、さらに極低温での磁化曲線において通常の強磁性体とは異なる非自明なヒステリシス挙動を示すことを見出した。これはヘテロなスピン系あるいは二次元ハニカム構造に由来する特徴であると予想され、本手法により新しい分子磁性体を創製できることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究における第一の課題は目的とする二次元ハニカム構造を有する金属錯体を実際に合成することである。本年度は、配位子となるラジカルの合成に成功したのみならず、目的の構造を有する二次元金属錯体を得ることができた。さらにこの銅錯体が磁化曲線において非自明なヒステリシスを示すことを見出した。この結果は本物質がグラフェンや通常の強磁性金属錯体とは異なる特異なスピン状態・磁気特性を有する可能性を示しており、予想を超えた研究進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、得られた銅錯体の磁気的性質を明らかにするために、磁気特性の結晶軸方向依存性、ヒステリシス挙動の温度特性を調べる。特に、磁気秩序化および磁気基底状態に関する詳細を調べるためにDC磁化率測定に加えAC磁化率測定を進める。さらにミクロスコピックな観点から磁気的性質を調べるためにESRスペクトル測定を進める。 同時に、単層のハニカムナノシートを得るための検討を進める。具体的には超音波やスコッチテープを用いたバルク結晶からの剥離の試験をすすめる。 加えて銅以外の磁性金属イオンを用いて新しいスピン構造を有する二次元ハニカム錯体の開発を進める。
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Research Products
(9 results)