2019 Fiscal Year Research-status Report
カーボンエッジ配位化学に立脚した非貴金属カーボン電極触媒の開拓
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19K22202
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野田 晃 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (60366424)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 非貴金属カーボン電極触媒 / カーボンエッジ配位化学 / 酸素還元反応 / ジアザヘキサベンゾコロネン |
Outline of Annual Research Achievements |
固体高分子形燃料電池は、高効率なエネルギー変換を実現する技術として最も期待されている。しかし、カソードでの酸素から水への4電子還元を伴う酸素還元反応の高活性かつ安価な電極触媒の開発が依然としてボトルネックであり、白金電極材料に代わる非貴金属材料を基盤とした高効率かつ高耐久性を兼ね備えたカソード電極材料の開発が望まれている。本研究では、高電導性・高耐久性を兼ね備えたグラフェン材料に、酸素還元を触媒する精密な金属活性点を組み込んだ非貴金属カーボン電極触媒の開発に取り組んだ。カーボンエッジ配位化学に立脚した含窒素金属錯体活性点の構築と、プログラム化サーマル合成を駆使したグラフェン構造の構築を行い、高活性・高耐久性を実現した非貴金属カーボン電極触媒を調製した。これまでにプリカーサーである鉄錯体の配位子に対して、芳香環骨格を拡張して熱耐久性を付与することにより、Fe-N活性点の生成率が増加し、酸素還元触媒としての活性が向上することを見出している。そこで、プリカーサーの芳香環同士を平面的に縮環するように配置することで、熱縮環によるグラファイト化を分子内で誘起する設計を行い、ジアザヘキサベンゾコロネン構造をもつ精密かつ均質な活性点をもつ非金属カーボン電極触媒の調製と活性評価を実施した。2,3-ビスピリジルトリフェニレン骨格を有する重合体とその類縁体をプリカーサーに利用してカーボン電極触媒を調製し、焼成時のプリカーサーの化学構造変化の同定および酸素還元活性の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通りに、グラフェンナノリボンのエッジに鉄が配位した構造をもつ非金属カーボン電極触媒の調製と酸素還元活性の評価を行い、4電子還元がより効率的に進行することを見出した。また、ジアザヘキサベンゾコロネン構造を形成するプリカーサーを用いたカーボン電極触媒調製とその活性評価も実施できており、おおむね順調に研究が進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
グラフェンナノリボンのエッジに鉄が配位した構造をもつ非金属カーボン電極触媒の調製と酸素還元活性の評価を行い、4電子還元がより効率的に進行することを見出した。プリカーサーの特性評価およびカーボン電極触媒の構造評価を行い、プリカーサーの熱安定性が高いこと、また鉄と窒素の配位構造をプリカーサー中に含むことが高活性なカーボン電極触媒調製に重要であることが明らかとなった。以上を踏まえて、今後の研究では、鉄と窒素環の配位構造を保持した一連の含窒素グラフェン型プリカーサーの合成とカーボン電極触媒の調製を行う。焼成条件やカーボン担体の種類を変えた触媒調製の最適化を行った上で、ナフィオン膜と混合後に回転電極に塗布し、酸素飽和の過塩素酸溶液中で、カーボン触媒の酸素還元活性の評価を行う。酸素還元に加えて、酸素発生反応に対する触媒活性についても評価する。X線光電子分光を利用して、カーボン電極触媒の窒素成分の化学結合状態についても明らかにする。また、X線吸収分光を利用し、カーボン電極触媒中のFe 活性点の構造解析も実施する。
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Causes of Carryover |
当初設置予定であった有機合成装置を変更したために使用額に差が生じた。次年度、新たに購入予定の精製用機器の支出にあてる計画である。
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