2019 Fiscal Year Research-status Report
超空間分解顕微分光を指向した二波長発光性希土類錯体の開発
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19K22207
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
湯浅 順平 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 准教授 (00508054)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 希土類錯体 / 温度センシング / 水溶性 / タンパク / 化学修飾 / ユーロピウム / 発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の目的はナノスケールの熱揺らぎを検出することのできる超空間分解能の発光温度センシング技術を開発することでである。従来の熱力学を見直し、新しい学理の構築の流れを生むことを最終的な目的として研究をおこなっている。特にの相転移現象の熱制御機構の解明を目指した超空間分解能の発光温度センシング水が氷へと相転移することはよく知られた物理現象であるが、ミクロスケールでのメカニズムは未解明な部分が多い。これらの研究に対するアプローチとて本研究では発光温度センシング機能をもつ水溶性希土類錯体の開発をおこなった。一般的にユーロピウム(III)を中心金属としてもつ発光性希土類錯体は水系の溶媒に対しては溶解性を示さないことが多い。今年度(2019年度)は主に、ユーロピウム(III)錯体を水溶化させる物質としてタンパク質に注目した。具体的にはタンパク質にユーロピウム(III)錯体を化学修飾によって結合させ、得られたユーロピウム(III)標識タンパクの発光形状変化に基づく温度センシング機能を評価した。ユーロピウム(III)標識タンパクについては研究代表者の先行研究(Chem. Commun. 2013, 49, 4604)に基づきおこなった。発光形状変化に基づく温度センシング機能の評価については研究代表者の先行研究(Chem. Commun. 2014, 50, 7937)に基づきおこなった。その結果、種々のタンパク質に標識化したユーロピウム(III)錯体は水溶液中においても高い発光性を示し、また5D0-7F2遷移に由来する発光の分裂が温度変化に応じて顕著に変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノスケールの熱揺らぎを検出することのできる超空間分解能の発光温度センシング技術を開発することを目的に研究を行っている。今年度(2019年度)は主に、ユーロピウム(III)標識タンパクの発光形状変化に基づく温度センシング機能について評価をおこなった。その結果、上述のように種々のタンパク質に標識化したユーロピウム(III)錯体は水溶液中においても高い発光性を示し、また5D0-7F2遷移に由来する発光の分裂が温度変化に応じて顕著に変化することがわかった。このことはユーロピウム(III)錯体由来の発光形状を各温度に対して検量することで、水溶液中の温度変化を発光形状の変化からセンシングすることが可能であることを示している。また5D0-7F1遷移に由来する発光バンドにおいても、水溶液中の温度変化に対して顕著な変化が見られたことから、これら2つの発光バンドを相対的に規格化することで高精度の発光温度センシングが可能になる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のように今年度(2019年度)の研究成果から、タンパク質に標識化したユーロピウム(III)錯体が水溶液中の温度変化をセンシングできる発光温度センサとして機能することを見出した。また、水溶液中の温度変化に対して5D0-7F2遷移および5D0-7F1遷移に由来する2つの発光バンドにおいて顕著な変化が同時に観測されることから、今後、これら2つの発光バンドを相対的に規格化することで高精度の発光温度センシングを展開する。有機溶媒系の発光温度センシングにおいては代表者の先行研究(Dalton Trans. 2013, 42, 16096)から2つの発光バンドを相対的に規格化した高精度の発光温度センシングの手法を明らかにしており、今後この手法を水溶液中の高精度の発光温度センシングに応用展開する。またユーロピウム(III)錯体に対しては、水溶液中の温度変化に対する応答性を増強させる配位子設計を施す予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度は概ね予定通りに研究を遂行したが、年度末を中心にコロナ渦等の影響があり、一部次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)