2019 Fiscal Year Research-status Report
Characterization of a metalloenzyme producing oxygen molecule from nitric oxide
Project/Area Number |
19K22208
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
當舎 武彦 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, 専任研究員 (00548993)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 一酸化窒素 / 金属酵素 / ヘム / 酸素分子発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化窒素(NO)の不均化反応(2NO → O2 + N2)を触媒すると提案されている一酸化窒素不均化酵素(NOD: Nitric Oxide Dismutase)の単離・精製を行い、その機能解明を目標とする。NOから酸素分子を産生するNODの触媒反応は、これまでに報告例のない生体内反応であり、その反応機構の理解は、生化学分野のみならず錯体化学・触媒化学分野など多くの研究分野において、ブレークスルーをもたらすと期待できる。 NODは、メタンの嫌気的酸化を行う細菌(Candidatus Methylomirabilis oxyfera)において、その存在が提案された金属含有膜タンパク質である。その後の研究から、その他の微生物においてもNODと予測されるタンパク質の存在が確認されているが、これまでに本酵素を単離・精製し、その酵素機能を調べた例は皆無である。そこで、本課題では、種々の微生物がもつNODの塩基配列に基づき、それらをコードした発現ベクターを設計した。それぞれのNODを大腸菌内で発現させ、膜画分を単離し、NO不均化反応を示すか検討したが、現在のところ明瞭なNO不均化活性を示すものは、得られていない。また、NODは、キノール依存型一酸化窒素還元酵素(qNOR)と高いアミノ酸配列の相動性を示すことに着目し、活性部位近傍のアミノ酸について調べたところ、複数のアミノ酸残基に変異がみられた、そこで、既に発現・精製法を確立している病原菌由来qNORを利用し、NODの活性部位を模倣した変異体qNORを設計した。 今後は、発現条件の検討を行い、NODやNODの活性部位を模倣したqNOR変異体がNO不均化反応を行うことができるか検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
報告されているNODの遺伝子配列を基に、種々の微生物にみられるNODと予想されるタンパク質の発現ベクターを設計した。それぞれを大腸菌で発現させ、膜画分を単離した。NO電極を用い、得られた膜画分がNO分解活性をもつか調べたが、明瞭な活性は確認できなかった。理由としては、NODの発現量が少なかったことなどが考えられるので、精製を行い酵素活性を調べる予定である。 NODのアミノ酸配列は、NOを還元的に分解するキノール依存型一酸化窒素還元酵素(qNOR)と類似することが知られている。両者の配列を比較すると、活性部位近傍に位置する酵素機能に重要であると考えられるアミノ酸残基に複数の変異が入っていることがわかる。そこで、既に酵素活性を持つ状態での発現・精製に成功している病原菌由来qNORを鋳型として、NODの活性部位を模倣したqNOR変異体を設計した。qNOR変異体を大腸菌で発現させ、膜画分を単離した。膜画分を用いて酵素機能を調べたところ、顕著なNOD活性は確認できなかったが、本来のqNORが有するNO還元活性についても大幅な低下がみられた。NOD同様、qNOR変異体も精製を行い酵素機能の詳細を調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
膜画分のNOD活性を指標とし、NODの大腸菌での発現条件を検討する。NOD活性を示すものが得られれば、可溶化・精製を試み、より詳細な酵素機能の検討を行う。この際には、NOの分解活性をNO電極で評価し、酸素分子の発生を酸素電極により評価する。活性をもつNODの精製標品については、各種分光計測により活性部位の特徴を調べる。また、X線結晶構造解析や低温電子顕微鏡法を利用した構造解析にも取り組み、構造機能相関の理解を目指す。 前年度に作製したNODの活性部位を模倣したqNOR変異体についてもNODと同様にして、酵素活性の評価を行う。qNORについては、既に結晶化条件や電子顕微鏡での試料調製法を確立できているという利点をいかし、構造解析を進めることで、NOD活性と構造の関連を調べる。 酵素活性をもつNODもしくは、qNOR変異体が調製できれば、時間分解分光計測による酵素反応機構の解明にも挑戦する。可視吸収から活性部位ヘムの電子状態および配位構造を検討し、振動分光から基質NOが結合したときの構造情報を得る。
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Causes of Carryover |
研究対象である膜タンパク質酵素の精製に用いる消耗品(カラム樹脂および界面活性剤)の使用量が予想より少量となった。これは、2019年度の実験では、酵素タンパク質の精製標品ではなく、酵素タンパク質を含む膜画分(粗精製標品)での実験が主になったためである。2020年度は、精製標品での実験がメインになるので、そのために必要となる消耗品費に、充当する。
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