2019 Fiscal Year Research-status Report
高分子鎖からなるソフトな巨大カゴ状分子システムの構築
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19K22209
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 敏文 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80291235)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 拓矢 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (30525986)
磯野 拓也 北海道大学, 工学研究院, 助教 (70740075)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 特殊構造高分子 / 精密高分子合成 / カゴ型高分子 / 星型高分子 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高分子鎖からなる巨大カゴ状分子の合成と構造・物性研究を行うと同時に、カゴの表面/内面の機能化による新規材料創出に挑戦し、「ソフトな巨大カゴ状分子」を新たなカテゴリーのカゴ状分子システムとして確立すること目標としている。 今年度は脂肪族ポリエステルであるポリカプロラクトン(PCL)を主鎖骨格とした巨大カゴ状分子の合成ならびに構造・物性評価を中心に行った。具体的には、トリオールを開始剤としたカプロラクトンの開環重合により3本鎖星型PCLを調製し、各末端の水酸基に対してノルボルネンカルボン酸を縮合反応させた。得られた末端ノルボルネン官能基化星型PCLにGrubbs第3世代触媒を加えることで分子内のみで末端を重合することで目的とするカゴ型PCLを得た。比較のため、同等の分子量を有する直鎖状および単環状PCLも合成した。まず、溶液中での分子形態を明らかにするため、有機溶媒中での小角X線散乱測定を行った。Guinierプロット解析より、カゴ型PCLの慣性半径は同等分子量の直鎖状PCLよりも明らかに小さいことが明らかになった。さらに、Kratkyプロット解析を行ったところ、カゴ型PCLからは特徴的なピークが見られた一方で直鎖状PCLではピークは認められなかった。環状PCLのKratkyプロットはわずかながらピークを示した。以上の結果から、カゴ型PCLは溶液中においてコンパクトにフォールドしたコンフォメーションを持つことが示唆された。また、固体中での構造を評価するため、直鎖、環状、カゴ型PCLのナノスケール薄膜を調製し、斜入射小角/広角X線散乱測定を行った。散乱プロファイルの定量的な解析を行ったところ、カゴ型PCLは他と比較して結晶化度や結晶層厚などが小さくなる傾向がみられた。これは各PCLアームが二か所で固定さていることと関連していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去に申請者らが確立したカゴ型高分子の精密合成法を応用することで、構造・物性研究に適したモデルポリマーを調製することが出来た。また、溶液および固体サンプルの放射光X線散乱実験から、カゴ型高分子に特徴的な構造や性質を見出しつつある。特に、Kratkyプロットからフォールドした構造を持っていることが示されたことは特筆すべき結果である。カゴ状高分子の内部空間へのゲスト内包については検討がやや遅れているものの、全体として研究は順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
カゴ型高分子の基礎的な構造・物性研究を推進するための基盤が今年度で整ったため、今後は様々な分子パラメータを有するモデルポリマーで検討を進めることによって望み通りの3次元構造を有する巨大カゴ状分子の設計指針を確立する。また、PCLだけでなく様々なポリマー種(ポリエチレンオキシド、ポリアクリレート、ポリメタクリルアミドなど)からなるカゴ型ポリマーの合成を進め、内部空間へのゲスト取り込みやその応用利用へと展開する。
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Research Products
(8 results)