2019 Fiscal Year Research-status Report
界面応力による未踏規則化合金ナノ粒子の創製と構造特異物性の開拓
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19K22231
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺西 利治 京都大学, 化学研究所, 教授 (50262598)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ材料 / パラジウム / 鉄 / 第三元素 / 規則化合金相 / Z3構造 / 磁気特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノスケール無機物質(ナノ粒子)の構造変換により得られる新奇結晶相は、一段合成で得られるナノ粒子にはない興味深い結晶構造・物性をもつと期待される。特に、無機物質の異方結晶構造に基づく異方的機能の発現は、高性能・高効率材料創製の観点から極めて興味深い。本研究では、ナノコンポジット磁石開発時に不純物金属相の界面応力により偶発的に得られたP4/mmm空間群を基礎とした新奇FePd3規則化合金相(L10-FePd相とfcc-Pd相が交互積層した結晶相)の形成メカニズムを解明し、新奇規則化合金相が発現する軽元素吸蔵特性や磁気特性等の構造特異物性を評価するとともに、未踏規則化合金材料群の設計指針を提案することを目的とする。 本年度は、二元系相図上Feと固溶できず、Pdと固溶可能なInをFe-Pd系合金ナノ粒子へ微少量添加することにより、Fe-Pd系合金の原子再配列を促し、新奇合金相の形成ならびに形成メカニズムの解明を試みた。その結果、L10-FePdユニットセル層とPd-In固溶体原子層が交互積層した先例のないZ3-Fe(Pd,In)3ナノ粒子の形成に成功した。第一原理計算から、Z3構造の形成駆動力がInの置換サイト(Feと隣接しない原子配置)であることが分かっただけでなく、Inと同様の元素固溶性を有する元素添加でのみZ3構造が安定化することが明らかになった。またZ3-Fe(Pd,In)3ナノ粒子の磁気特性が、In量がより少ない場合に形成されるL12-(Fe,In)Pd3ナノ粒子と飽和磁化が同程度である一方で、15倍程高い保磁力を有することが分かった。これは、Z3構造が極めて異方性の高い結晶構造であるためと考えられる。以上より本研究は、優れた磁気特性を有する未踏合金を合成する新たな戦略として元素固溶性が有用であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初の計画通り、Z3構造をもつFe-Pd系合金ナノ粒子の合成・キャラクタリゼーションに成功した。また、Z3構造の形成駆動力がInの置換サイト(Feと隣接しない原子配置)であることが分かっただけでなく、Inと同様の元素固溶性を有する元素添加でのみZ3構造が安定化するという新しい研究成果を得ることができ、次年度の研究方針の決定に重要な結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
Z3構造がInと同様の元素固溶性を有する元素添加でのみ安定化することを実証するために、第三元素としてCdやPbを微少量添加したFe-Pd系合金ナノ粒子の合成、ならびに、キャラクタリゼーションを行う。また、Pd3原子層でのH2吸蔵・放出が可能かどうかをPCT測定装置で評価する。最後に、新奇規則化相が形成するメカニズムをFePt系などの他の系へ応用展開し、未知の規則化合金材料群の設計指針を提案する。
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Causes of Carryover |
理由 平成31年度は、第三元素導入によるZ3構造Fe-Pd系合金ナノ粒子の合成、ならびに、キャラクタリゼーションについて集中的に検討を行い、物品費ならびに旅費が当初予定ほどはかからなかったため。 使用計画 次年度の研究加速のため、平成31年度分未使用額を、金属塩や水素混合ガス等の消耗品の購入費、ならびに、共同研究者との打合せ・実験のための旅費に充当する
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Research Products
(3 results)