2019 Fiscal Year Research-status Report
カルビンサイクルの機能模倣によるCO2から糖の人工光合成
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19K22232
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 周次 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 教授 (40333447)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 知之 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80211811)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 人工光合成 / 二酸化炭素 / エネルギー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、光合成のカルビンサイクルにおけるCO2還元固定化戦略に倣い、自己触媒過程を内包する非生物反応であるホルモース反応サイクルをベースとしたCO2から糖の人工光合成の実現を目指す。ホルモース反応は、アルドール付加反応に基づくアルデヒドからの糖の合成反応であり、塩基性条件下において二価金属イオンに触媒される。この反応をベースとした反応サイクルとCO2のアルデヒドへの光還元反応とを融合させ、CO2を出発物質とした糖の人工光合成の実現を目指す。本研究を通して「触媒反応サイクル」という新しいコンセプトの実証に挑戦し、人工光合成のみならず、非生物的な有機物生産がキーである生命起源の分野や、少量・多品種生産へと構造シフトしていく化学工業分野など、多くの分野を横断的に支える基盤的学理を構築する。 本研究を遂行するにあたっては、(1)CO2からアルデヒド化合物を生成する電極触媒の開発、ならびに(2)自己触媒的な反応サイクルの設計に注力した。課題(1)に関しては、CO2還元生成物を定量的に解析するための方法論確立に取り組んだ。その結果、標的生成物であるホルモアルデヒドを初め、種々のCO2還元生成物の定量評価する体制が整った。一方、課題(2)に関しても実験・数理の両面からのアプローチを実施した。実験に関しては、安定にホルモース反応を進めるためのリアクタを開発すると共に、生成物として期待される単糖類の分析評価系を立ち上げた。数理的アプローチに関しては、線形反応経路、サイクル状反応経路、ならびに自己触媒過程を内包するサイクル状反応経路の3種のミニマムモデルを作成し、これらの反応ネットワークが有する自己組織化能を調べる基盤を作成することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、(1)CO2からアルデヒド化合物を生成する電極触媒の開発、ならびに(2)自己触媒的な反応サイクルの設計、の2つの課題に集中的に取り組む必要がある。後者の課題は、実験的研究と数理的研究にさらに細分化される。本年度は、実験的研究に関し、期待する反応進行の可否を定量的に評価する系を確立した。一方、数理的研究に関しては、今後の自己触媒反応サイクル設計のベースとなるミニマムモデルを構築するに至った。このように、本研究は概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、反応生成物を定量的に把握する評価系が確立されたことから、2020年度は種々の触媒候補材料におけるCO2/HCHO変換反応、ならびにホルモース反応の挙動を詳細に追跡する。また、自己触媒反応サイクルのミニマムモデルを、ホルモース反応に適用する。ホルモース反応を記述する微分方程式の解析により、この反応ネットワークが自己触媒的に機能する条件を抽出する。プロジェクト終了までに、上記の実験的研究および数理的研究を融合させて新しい触媒サイクルを得るための指針を確立する。
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Causes of Carryover |
生成物の分析装置の故障があり実験が一定期間滞ったため。次年度に当初予定していた理論研究を前倒しで実施した。実験研究の一部は令和2年度に行うよう実験計画を変更している。
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Research Products
(4 results)