2019 Fiscal Year Research-status Report
Nanopore sequencing of RNA modifications
Project/Area Number |
19K22246
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 勉 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (20292782)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ナノポアシーケンス / RNA修飾 / tRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
RNA修飾はRNAの構造と機能に付加価値を与えることで、転写後における遺伝子発現調節に大きな影響を持つことが明らかになりつつある。これまでに約150種類のRNA修飾が、様々な生物種から見つかっている。近年の次世代シーケンサー解析(NGS)を用いたトランスクリプトーム解析により、RNA修飾が大量に見つかり、最近はエピトランスクリプトームと呼ばれ、転写後段階における新しい遺伝子発現制御機構として、生命科学に大きな潮流を生み出している。 RNA修飾の機能を正しく理解するためには、修飾部位の精確なマッピングが不可欠である。現在広く用いられているマッピング法として、抗RNA修飾抗体を用い、免疫沈降によって濃縮されたRNA断片をcDNA化し、NGSで解析する方法が主流である。しかしこの手法は、抗体の特異性に問題があることや、分解能の低さから1塩基レベルでのマッピングが困難であるなど、数々の問題が指摘されている。また、一方で、RNA分子を質量分析法で直接解析する手法は、非常に信頼性の高いデータが得られる一方で、微量な試料には適さない。このような背景を元に、私たちは、微量なRNAに適応可能で、RNA修飾をより精確にかつ実用レベルで解析する技術を模索してきた。 現在広く用いられているNGS解析は、すべてRNAを一度cDNAへと変換するため、RNA修飾情報が残らないという根本的な問題がある。一方で、ナノポアシーケンサーは、RNA鎖をcDNA化せずに直接配列解析することがが可能な1分子シーケンサーである。本研究において、私たちは、tRNAやmRNAに含まれるRNA修飾を非標識あるいは標識することで、直接的にナノポアシーケンスする技術を開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
様々なRNA分子の中で、tRNAが最も複雑に修飾されたRNAである。したがって、tRNAをプロファイリングするためには、RNA修飾による逆転写の停止が問題になり、イルミナに代表される既存のNGSでは正確な解析が困難であることが知られている。私たちは本研究で、細胞から抽出した全tRNAを未分画のままナノポアシーケンスし、個々のtRNAが通過した際に生じる特徴的な電流波形のパターンから、その配列を読むことなく1分子ごとにtRNA種を特定する分類器の開発を目指している。この手法を検証するために、まずは大腸菌から全44種類のtRNAを単離精製し、ナノポアシーケンスにより個々のtRNA分子の電流値を大量に取得した。この全44種類のデータを用い、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に深層学習させた。様々な学習モデルを検討し、エポック数を上げたところ、分類の精度を実用的なレベルまで引き上げることに成功した。テストデータを用い、精度の検証を行ったところ、全44種類のtRNAを平均で98%を超える高い精度で分類することに成功した。実際にこのアルゴリズム(tRNA分類器と呼ぶ)を用いて、未分画tRNAをナノポアシーケンスし、全tRNAの分類と頻度から各tRNAの存在比を見積もることにも成功した。さらに、tRNA修飾の有無を判定するtRNA修飾検出器を作成するために、tRNA修飾遺伝子の破壊株から精製したtRNAと野生株から単離したtRNAをそれぞれナノポアシーケンスし、CNNに深層学習させたところ、たった一か所の修飾の有無を判定することに成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回作成に成功した大腸菌におけるtRNA分類器の性能を確認するために、大腸菌未分画tRNAをナノポアシーケンスとイルミナシーケンスでそれぞれ分類し、検出された頻度から二つの分類方法の精度を比較する。また、tRNAごとの違いによるバイアスを補正するために、精製したtRNA44種類を等モルづつ混合したサンプルを同様に二つのシーケンスで解析を行うことを計画している。
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