2019 Fiscal Year Research-status Report
多機能性ナノ粒子プローブによる細胞表層分子ダイナミクス解析とガン細胞診断応用
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19K22249
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三原 久和 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30183966)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ペプチド / リガンド / 蛍光 / ナノ粒子 / ガン細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガン細胞は表層の膜タンパク質・複合糖質の発現量や組成などのダイナミクスを変化させることで、異常な増殖能や疾患部位からの浸潤、他の臓器への転移能を獲得していることが示唆されており、細胞表層の生体分子のダイナミクスを解析する画期的な手法が求められている。本研究では、ガン細胞表層の生体分子と相互作用するペプチドリガンド群と分子ラベル化触媒を蛍光ナノ粒子上に集積した多機能性プローブを開発し、ガン細胞表層の生体分子のダイナミクス解析を実施し、由来や悪性度の異なるさまざまなガン細胞のフィンガープリントを解析することによって、新規のガン細胞診断法(Cancer Cell Typing : CaCeT)に発展させることを目的とした。本年度は、蛍光シリカナノ粒子の調製と、タンパク質に結合するリガンドおよびラベル化触媒をナノ粒子上に集積し、タンパク質のラベル化解析を行った。橙色蛍光を示すローダミンB(RhoB)誘導体を封入した蛍光シリカナノ粒子を粒径が15 nmになるように調製することに成功した。この蛍光シリカナノ粒子の表面にシランカップリング法を用いてアジド基を提示させた。リガンドとして炭酸脱水酵素の阻害剤であるベンゼンスルホンアミド(SA)を、ラベル化触媒として4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)を選択し、SAとDMAPにアルキン基を導入した誘導体を合成した。また、DMAPにより活性化されるラベル化剤として、緑色蛍光色素であるフルオレセインのチオエステル誘導体を合成した。アジド基を提示した蛍光シリカナノ粒子上にアルキン修飾SAおよびDMAPをクリック反応により導入し、多機能性ナノ粒子プローブを調製した。調製したナノ粒子プローブを用いて炭酸脱水酵素のラベル化を行った結果、標的とした炭酸脱水酵素に対して選択的なラベル化が進行していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年(令和1年)度は、リガンドとラベル化触媒を提示した蛍光シリカナノ粒子プローブの調製と、調製したナノ粒子プローブを用いた細胞表層生体分子の蛍光イメージングとラベル化解析を計画していた。当初、蛍光シリカナノ粒子の表面にアミノ基を導入し、マレイミド化した後に、チオール基を導入したリガンドおよびラベル化触媒を反応させて目的を達成する予定であったが、シリカナノ粒子の表面にアミノ基を導入する過程で粒子が凝集してしまうという問題が生じたため計画を変更した。アジド基をもつシランカップリング剤を合成し、ナノ粒子表面にアジド基を提示することとした。リガンドおよびラベル化触媒にアルキン基を導入した誘導体を合成し、クリック反応によりナノ粒子表面のアジド基と反応させた結果、リガンドとラベル化触媒を提示した蛍光シリカナノ粒子プローブを調製することができた。リガンドとしてベンゼンスルホンアミド、ラベル化触媒として4-ジメチルアミノピリジンを用い、炭酸脱水酵素のラベル化を行った結果、標的とした炭酸脱水酵素に対して選択的なラベル化が進行していることが明らかとなった。しかしながら、リガンドとラベル化触媒の修飾に伴ってナノ粒子が部分的に凝集してしまうという問題が残っており、今後の検討課題となっている。 リガンドとして、ベンゼンスルホンアミドの他に、ガラクトース誘導体や、研究室で見出したガン細胞選択的な細胞膜透過ペプチドを用いた検討も行った。これらのリガンドについては、蛍光シリカナノ粒子上への集積条件の最適化を行っている段階である。 リガンドとラベル化触媒を提示した蛍光シリカナノ粒子プローブの調製とタンパク質のラベル化解析までは達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年(令和1年)度から継続研究課題である「細胞表層における生体分子のイメージングとラベル化解析」を引き続き実施し、細胞表層の生体分子のラベル化解析の手法を確立する。また、リガンドとラベル化触媒の修飾に伴ってナノ粒子が部分的に凝集してしまうという問題については、ナノ粒子表面の親水性を高める修飾を施すなどの対策を検討する。 平成31年(令和1年)度の研究計画に引き続き、令和2年度に計画している「ガン細胞表層の生体分子群のダイナミクス解析」を実施する。昨年度の計画では乳ガン由来の細胞を標的として、細胞表層の生体分子のラベル化解析の手法を確立するが、令和2年度は比較対象として正常組織由来の細胞を追加し、ガン細胞に特徴的な細胞表層生体分子の同定を試みる。また、組織の由来が異なるガン細胞群を用いて細胞表層の生体分子群のダイナミクス解析を実施し、ガン細胞の種類を特定する生体分子の同定についても検討を進め、ガン細胞表層の生体分子群のダイナミクス解析による画期的なガン細胞診断技術を萌芽を目指す。
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Research Products
(3 results)