2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of A Super-Sensitive Immunolabeling Method Utilizing DNA Origami Molecular Machines
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19K22261
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
葛谷 明紀 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (00456154)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | DNAオリガミ / 人工抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、医療診断分野で広く用いられている抗体分子に関して、その製造コストの問題を解決するために、「抗体がもつ特長を全て備えつつ、さらにこれを凌駕した機能をもつ『人工抗体』を、タンパク質以外をつかって構築する」ことを目的とする。そのために、研究代表者が世界に先駆けて独自に開発した「ターゲット分子を挟むように結合することでX字型の開いた構造から=字型の閉じた構造(パラレル型)に変形するDNAオリガミ分子機械(Nature Commun. 2011, 2, 449.)」を本体に使用することで、DNAでできた「人工抗体」を構築する。具体的には、免疫染色やELISAでも用いられる実践的なターゲットを認識する「基質認識部位」、およびDNAオリガミ分子機械の構造変化を蛍光や酵素活性として検出するための「シグナル発信部位」を、応募者独自のDNAオリガミ分子機械に組み込むことで、世界に類例のない「アロステリック人工抗体」の実用化をめざす。2019年度は特に、「シグナル発信部位」を中心に検討した。当初の計画通り、導入するSplit DNAzymeとしてDNA四重鎖とHeminを活用するSplit Hemin DNAzymeを選択し、構成する四本の鎖の組み合わせとして、まずは二本ずつに分割する系を実際に試してみた。その結果、ただ単にDNA四重鎖を二分割しただけでは、四重鎖を再形成するための相互作用が強すぎて、ターゲット不在下でもシグナルを発してしまう(偽陽性反応)ことが明らかとなった。これを解決するために、ターゲット不在下でもDNAオリガミ分子機械の初期構造を開いたX字型ではなく、もうひとつの閉じた構造であるアンチパラレル型に固定しておくことで、DNAオリガミ分子機械の構造変化に伴うシグナルのオンオフスイッチングが可能であることを確かめた。今後はDNA四重鎖の分割を3+1などに変更し、開いた構造でもDNA四重鎖が再構成されない組み合わせを探索していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、DNAオリガミ分子機械が基質を認識して構造変化をしたことをAFM以外で容易に検出するための「シグナル発信部位」を中心に検討した。導入するSplit DNAzymeとしては、Split Hemin DNAzymeを選択した。先行例が多く報告されているGカルテット構造とHeminの組み合わせによるペルオキシダーゼ活性DNAzymeについて、既報(Darius et al. Mol. BioSyst., 2010, 6, 792)にしたがって二分子に分割したsplit体を設計し、DNAオリガミを構成する鎖と直結することで、それぞれの断片をDNAオリガミ分子機械に導入した。これにより、DNAオリガミ分子機械が閉じたときのみペルオキシダーゼ活性が再構成され、発色/蛍光基質の増大として検出できる系となることを想定した。その結果、ただ単にDNA四重鎖を二分割しただけでは、四重鎖を再形成するための相互作用が強すぎて、ターゲット不在下でもシグナルを発してしまう(偽陽性反応)ことが明らかとなった。これを解決するために、ターゲット不在下ではDNAオリガミ分子機械の初期構造を開いたX字型ではなく、もうひとつの閉じた構造であるアンチパラレル型に固定しておき、ターゲットとの相互作用でその固定を外す機構を考案した。実際にmRNAをターゲットとしてこの機構を検証した結果、問題なくDNAオリガミ分子機械の構造変化に伴う、ペルオキシダーゼ活性とその結果としてのシグナルのオンオフスイッチングが可能であることを確かめた。
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Strategy for Future Research Activity |
「シグナル発信部位」については、DNA四重鎖の分割を3+1などに変更し、開いた構造でもDNA四重鎖が再構成されない組み合わせを探索していく。また、検討が遅れている抗原結合部位については、当初計画通りのアミノファロイジン(人工一次抗体の構築)および、抗ヒトIgG RNAアプタマー(人工二次抗体の構築)を検討していく。ファロイジンは、細胞骨格の一つであるアクチン線維を特異的に認識して強固に結合することが知られているビシクロ型の環状ペプチドであり、その蛍光色素誘導体は、固定した細胞の顕微鏡観察において、アクチンの蛍光染色に広く用いられている。そこで免疫染色用のリガンドの代表例として、このファロイジンをDNAオリガミ分子機械の基質認識部に導入する。これにより、アクチンの蛍光染色に使用できる「DNAオリガミ人工一次抗体」の構築を試みる。アクチンへの特異的結合は、AFM測定による直接観察と、Cy3-Cy5のFRETペア修飾による蛍光観察により確認する。また、「DNAオリガミ人工二次抗体」を構築するために、IgGのFc部を特異的に認識する部位をDNAオリガミ分子機械に導入する。この目的に最適なリガンドとして、抗ヒトIgG RNAアプタマーApt8-2が報告されており(Miyakawa et al. RNA 2008, 14, 1154)、Fc部との複合体のX線結晶解析も行われている(Nomura et al. NAR 2010, 38, 7822)。従って、DNAオリガミ分子機械の二本のレバーにそれぞれApt8-2を1分子ずつ結合した場合、「Apt8-2の協同的な作用により一分子のヒトIgGを捕捉して閉じるDNAオリガミ分子機械」の実現が期待できる。
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Causes of Carryover |
当初計画していた、機能性分子の導入が比較的容易なDNA Pliersに対して行う「1. 基質を特異的に認識するリガンド」および「2. 基質の結合にともなうDNAオリガミ分子機械の構造変化を可視化するためのシグナル発信部位」の二項目の検討内容の内、後者に集中的に取り組んだ結果、前者については計画していた全ての実験を行うことができなかった。そのため、取り残した検討内容を次年度に繰り越して実施することとし、そのための予算を次年度使用額とした。第2年次には、当初計画の検討内容を全て完了させ、同時に助成金も全額執行する予定である。
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Research Products
(5 results)