2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of adaptability to substitute non-trophic elements of cells
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19K22264
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
魚住 信之 東北大学, 工学研究科, 教授 (40223515)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山上 睦 公益財団法人環境科学技術研究所, 環境影響研究部, 副主任研究員 (60715499)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 非栄養元素 / イオン輸送体 / 必須元素 / Na / K |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内の陽イオンは,陰イオンや有機酸とともに高い濃度で存在して,細胞の浸透圧や膜電位の維持に寄与している.一方,細胞にとっては不要あたは毒性を有する元素は細胞内に取り入れる必要はないと考えられている.しかし,最近我々は,非栄養元素のRbやCsが大腸菌の増殖を支えることを明らかにした.このことは,状況によっては,非栄養元素が細胞内に存在して,生命維持に寄与することを示唆する.これまでに見抜くことができなかった非栄養元素が必須元素を代替する条件とその分子機構を明らかにする.本研究では,新たに大腸菌と光合成微生物の藍藻から非栄養元素のLiとNaの輸送体の単離を試みる.さらに,LiもしくはNaの輸送体と培地中にわずかに含まれるKを吸収する高親和性K輸送体が協奏的に機能すると大腸菌はLiやNaの主要培地で増殖するようになるのかを検討する.このような状況では,高親和性K輸送体も重要な役割を担うことが分かっている.本体と推定されるKdpの発現は通常培地では極めて低い.このため,Kdp以外のK輸送体を検討する.細菌から植物まで,広く存在が確認されているK輸送体のTrkのイオン選択性を調べる.これまで広く用いられている3種類のNa排出系遺伝子の変異株は,薬剤耐性遺伝子が導入されており常に薬剤耐性状況下の下で測定を行わなければならなかったことから大腸菌に多大なストレスがかかることが問題であった.本研究では独自に多重変異株を作成して,Naの生理的利用と作用を検討する.養分に貧する危機的環境を乗り越えようとする細胞のしくみを解明することで細胞の環境適応力の一端を明らかにする.極限微生物の増殖や環境中の元素の生物回収と蓄積に関する新たな概念を吹き込むことをめざす.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大腸菌に4種類のK輸送体Kup, Kdp, TrkG, TrkHが存在する.この4種類の遺伝子変異体を R 1トランスダクション及び PCR を用いた相同的組換え法によって四重変異株の作成を行った.途中,変異導入ができない場合が生じたことから遺伝子の変異する順序を代えることにより多重変異株の作成を行った.この四重変異株を完成したのち,野生株と比較したところ,高いK要求性を確認した.このK輸送活性バックグラウンド活性の本変異株に各輸送体を導入し,輸送活性を確認した.次に,LiとNaなどの他の陽イオン輸送活性を測定した.この結果,TrkGとTrkHにおいて他の輸送体よりも高いナトリウム輸送活性を見いだした.一方,Liの透過性はTrkGとTrkHで検出されなかった.さらにTrkGとTrkHを比較したところTrkHの輸送活性はTrkGに比べて非常に高いことが分かった.また,TrkGはNa依存的イオン輸送活性を持つことを明らかにした.また,TkrHのK輸送活性はTrkGよりも大きく,Kdpに近いほどの高親和性を示した. Na輸送活性を詳細に検討するために大腸菌がNaを排出する輸送体の遺伝子の多重変異株の作製を上記と同様に行った.三重変異株を作成し,Na輸送活性およびNa感受性を測定する菌として利用できる. 藍藻のNa排出系を明らかにするために6種類のNa/Hアンチポーター遺伝子の変異株を作成した.その増殖曲線について検討したところ,いくつかの変異株ではNa要求性を示した.しかし,野生株でもNa要求性を示すことが新たに明らかになったことから,藍藻はは強いNaを栄養源に用いことが分かった,作成した変異株のNa要求性を野生株と比較して6種類の輸送体変異株の中からNa要求性に関与する変異株を見いだした.
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Strategy for Future Research Activity |
大腸菌のK輸送体の多重変異株およびNa輸送体の多重変異株を用いて,目的の輸送体遺伝子の変異を導入する作成した多重変異株を作成してその性質を調べる TrkG がNaを栄養元素として利用する可能性が高い.これを証明するため,TrkGを導入した大腸菌を様々な陽イオンの濃度の培地で生育させる実験を行う.また TrkGとTtkH は相同性のあるホモログでありながら,Na依存性に関する差異がことなる.キメラタンパク質を作成することにより,Na制御領域の同定をすすめる.TrkHが大きな輸送活性を示すことから,タンパク質安定性または,膜への挿入度合いを検討する.細胞内の主要元素のKはLi・Naと拮抗し,細胞内のLi/KおよびNa/Kの比を調節する.細胞内K濃度とKの吸収・排出を測定する.一般にKの代替として放射性86Rbが用いられるが,類似元素であるという理由から結果の信頼性は低い.細胞内K濃度とKの吸収・排出を測定する.輸送評価においては,放射性同位体を用いることも検討する. 一般にNaを必要としない光合成生物がNaの要求性をNa添加培地による増殖度合いにより調べる.藍藻のNa/Hアンチポーター遺伝子変異株を用いて,Naを栄養源として利用するか否かを確認し,Na吸収に必要な輸送体の同定をすすめる.
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Causes of Carryover |
放射性元素の生成とそれに関係する測定を2020年度に行う予定になり,それに関連する測定用の消耗品が2020年度に使用することになった.
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Research Products
(2 results)