2019 Fiscal Year Research-status Report
Challenges into the definite control of human odor by regulating the oxidation of a newly conceptualized terpenoid "squalene"
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19K22265
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
仲川 清隆 東北大学, 農学研究科, 教授 (80361145)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永塚 貴弘 東北大学, 農学研究科, 准教授 (30445895)
伊藤 隼哉 東北大学, 農学研究科, 助教 (50781647)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | テルペノイド / 酸化 / 体臭 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは誰しも匂い、即ち体臭を有する。現在、体臭(特に加齢臭)の主たる原因は皮脂の脂肪酸の酸化で生じる2-ノネナールと考えられ、その抑制に向けた試みが農・薬・医の多方面で行われている。しかし、2-ノネナールを標的とする体臭の抑制は、未だ達成されていない。2-ノネナールおよび他の臭気成分を生じさせ得る脂肪酸以外の新たな体臭原因化合物が皮膚にあり、その発見により、真の体臭制御の実現に繋がると応募者は考える。応募者は質量分析装置(MS/MS)を駆使し、食品や生体の酸化物を解析する中で、ヒトの皮脂にテルペノイドであるスクアレンの酸化物の異性体が存在すると気付いた。さらに極最近、こうした酸化物から、体温ほどの温度でも極短時間の内に特徴的な酸味臭が生じる手がかりを得た。故に、スクアレン酸化物の異性体が、それぞれ二次酸化・開裂を経て種々の臭気成分を生じ、ヒト体臭の多様性に繋がるという新学説が強く示唆される。スクアレンは単一化合物として皮脂に最も多く、その化学構造的特徴から脂肪酸より容易に酸化されることも踏まえ、スクアレンこそが体臭原因化合物で、その酸化抑制を介した体臭制御が可能と考えるに至った。本研究ではこうした萌芽的新学説の証明を目的に、1)ヒト体臭の多様性がスクアレンの酸化に起因することの証明、2) スクアレンの酸化抑制による体臭の制御、これらの課題に挑戦する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) ヒト体臭の多様性がスクアレンの酸化に起因することの証明 スクアレンの酸化物から様々な臭気成分が生じ、これがヒト体臭の多様性に繋がることの証明に挑戦した。令和元年度は、スクアレン酸化物の種々の異性体を化学合成し、試験管試験(体温や湿度など実際の生活環境下を模した条件でインキュベート)を行った。その結果生じる種々の臭気成分の化学構造をGC-MS等を駆使して精密同定し、それらの生成経路の一部を推定した。 2) スクアレンの酸化抑制による体臭の制御 応募者はこれまでに、種々の抗酸化物質がスクアレンの酸化を抑制でき、さらには抗酸化物質の選択で特定の異性体の生成を抑えられることを見出しつつあった。令和元年度は、1)で見極めた各種体臭に最も寄与するスクアレン酸化物の異性体を標的とし、その異性体の生成抑制に最適な抗酸化物質の探索を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ヒト体臭の多様性がスクアレンの酸化に起因することの証明 令和2年度は、ヒトの様々な体臭における臭気成分の寄与を評価する。即ち、年齢・性別・生活環境が異なる被験者から皮脂を採取し、それぞれのヒト体臭に深く関与する臭気成分をGC-MSやLC-MS/MS等の機器分析で究明する。同定した臭気成分が実際にどのような臭いかをパネル試験でも評価する。こうして、各種体臭に関与するスクアレン酸化物の異性体と、それから生じる臭気成分を明らかにすることを目指す。 2) スクアレンの酸化抑制による体臭の制御 令和2年度は、令和元年度に手がかりを得た抗酸化物質の有用性を動物モデルで評価する。具体的には、実験動物に各種の体臭を模した組成でスクアレン酸化物の異性体を塗布することで体臭を再現し、この動物モデルに抗酸化物質を塗布、または経口投与する。一定時間後に皮脂を採取・解析し、抗酸化物質の塗布または経口摂取に伴う臭気成分の変化を評価する。また倫理的側面を十分に配慮し、こうした抗酸化物質をヒトに塗布することの有効性についても、ヒト試験で評価する。これらの結果から、体臭の主原因は、テルペノイドであるスクアレンの酸化であり、その酸化抑制により体臭の制御が可能であるという応募者の萌芽的新学説の証明を目指す。
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Research Products
(2 results)