2019 Fiscal Year Research-status Report
Is transcription factor TEAD a missing protein lysine fatty acyltransferase?
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19K22271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 稔 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80191617)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 昭博 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (40391859)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | タンパク質アシル化 / 長鎖アシル化酵素 / 脱長鎖アシル化酵素 / アシル基転移反応 / TEAD / Hippo経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
タンパク質リジン残基のアセチル化は多くのタンパク質に普遍的に見られる翻訳後修飾であり、アセチル化、脱アセチル化酵素はその大半が同定され、機能が解析されてきた。ところが、最近、アセチル化だけでなく、構造的に多様なアシル化が起こっていることがわかってきた。これらの脱アシル化酵素の解析は進み始めているが、アシル基転移酵素(アシル化酵素)についてはほとんどが不明のままである。そのため、リジン残基のアシル化はアシルCoAから非酵素的に転移しているという考えが定説化してきている。中でも長鎖アシル化は、最近注目されているものの一つであり、脱アシル化酵素としてSIRT2, SIRT6, HDAC8等が報告されているが、やはりアシル化酵素は不明である。われわれは、転写因子TEADのリジン残基が自己アシル化されることを見いだし、TEADこそがこれまで不明であった長鎖アシル基転移酵素なのではないかと考えた。そこでまず、TEADのリジン残基アシル化において、立体的に近傍に位置するシステイン残基が自己アシル化を触媒している可能性を検討するため、システイン残基のS-パルミトイル化を検出する系を確立した。その結果、TEADタンパク質1分子あたり1つのパルミトイル基が付加していることが示唆された。さらに、システイン変異体ではアシル化がほとんど起こっていないこと、標的リジン変異体では野生型と比較してS-アシル化が亢進していることを見出したことから、TEADのリジン残基のアシル化は、システイン残基を介した自己触媒反応であることが示唆された。今後は、大腸菌から作製、精製したリコンビナントTEADタンパク質を利用したin vitroアシル化反応を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、がん抑制経路の1つであるHippo経路の下流で制御される転写因子TEADがリジン長鎖アシル基転移酵素として機能する、という仮説を検証することを目的としている。2019年度は、TEADのアシル化反応の検討を主な目的として研究を実施した。TEADのリジンアシル化が近傍に位置するシステイン残基の自己アシル化を介していることを検討するためには、システイン残基のS-パルミトイル化を検出する系の確立が必要である。そこで、タンパク質1分子あたりのS-アシル基の個数やアシル化されているタンパク質の割合を知ることができるAPEGS (Acyl-PEGyl exchange gel shift) アッセイ (Yokoi et al. J Neurosci 2016) の確立を試みた。大腸菌から精製したリコンビナントTEAD2タンパク質を用いてこのアッセイ法を用いたところ、TEADタンパク質1分子あたり1つのパルミトイル基が付加していることを示唆する結果を得ることができ、これは既報と一致していた(Chan et al. Nat Chem Biol 2016)。さらに、C380S変異体ではアシル化がほとんど起こっていないこと、K357R変異体では野生型と比較してS-アシル化が亢進していることを見出した。以上の結果から、近傍のシステインのアシル化を介してリジンアシル化が起きていることが示され、TEADはリジン残基の自己アシル化酵素であることを示唆する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
Hippo経路の下流で働く転写因子TEADがリジン長鎖アシル基転移酵素として機能する、という仮説を検証するため、引き続き以下の研究を推進していく。 (1)アシル化反応の検討:大腸菌から作製、精製したリコンビナントTEADタンパク質を利用したin vitroアシル化反応を行う。抗TEAD長鎖アシル化リジン抗体とAPEGSアッセイを用いることでリジン、システインのアシル化の経時変化を検討する。リジン自己アシル化の確認後、トランスにアシル化が進行することを確認するために野生型とともにTEAD2 C380S変異体を基質として混合し、C380Sのリジン長鎖アシル化が起こるかどうかを検討する。また、TEAD結合タンパク質の中に基質が存在する可能性がある。YAP等のTEAD結合タンパク質のリジン長鎖アシル化について検討する (2)アシル化制御因子の探索:リコンビナントタンパク質でのトランスアシル化が確認できなかった場合、細胞内でTEADと結合するアシル化制御因子の探索を試みる。基質としてTEAD2 C380S変異体を、酵素として細胞内から免疫沈降法で精製した野生型TEADを使用し、in vitroでのアシル化反応を行うことでC380S変異体のアシル化が亢進するかを検討する。この方法でアシル化が亢進する場合、TEADと共沈したタンパク質を質量分析等で同定し、それらがアシル化反応に与える影響をさらに調べる。
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Research Products
(2 results)