2019 Fiscal Year Research-status Report
活性フラボノイドによる選択的mRNAスプライシング制御の分子機構解明と応用展開
Project/Area Number |
19K22280
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
増田 誠司 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (20260614)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬尾 茂人 大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (30432462)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | フラボノイド / 選択的スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
食品成分には実に様々な生理活性を持つことが明らかにされてきている。中には細胞の遺伝子発現を促進する化合物も見出されている。ただ従来の解析法は、単一あるいは少数の特定遺伝子の発現促進で評価されてきた。一方、ヒトでは多くの遺伝子において選択的mRNAスプライシング(以後、選択的スプライシング)が生じている。しかし、食品成分が遺伝子の選択的スプライシングに与える包括的効果については、これまで解析されていない。 研究代表者は、ヒト培養細胞を用いて食品成分より核内mRNAプロセシング過程を阻害する化合物を探索してきた。その結果、特定の構造を持つフラボノイド(活性フラボノイド)に強いmRNAプロセシング阻害活性を持つことを見いだした。さらに細胞内標的タンパク質がスプライシングを制御するU2 snRNPやU5 snRNPであることを示した。これらの観察から、活性フラボノイドはスプライシングを阻害していると予想し、細胞全体のRNAを用いてNGSにより包括的に解析した。その結果、期待どおりスプライシング阻害を観察した。一方、活性フラボノイドは選択的スプライシングにも影響を与えていることを発見した。本研究は、活性フラボノイドによる選択的スプライシングの分子機構を明らかすることを目的とした。 選択的スプライシング解析のため、rMATS法を用いて選択的5’エキソン、選択的3’エキソン、エキソンスキップ、相互排他的エキソン、イントロン含有解解析を実施した。活性フラボノイドはこれらすべての選択的mRNAスプライシングに変化を生じさせていた。これらについてリアルタイムPCRにて検証を実施し、結果に相違ないことを確認した。ついでミニ遺伝子についてレポーター発現系を構築し、ヒト培養細胞に導入し、表現系が野生型と同様であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
活性フラボノイドを使用した解析について、当初予定の解析の多くを実施し、かつ論文化した(iScience誌)。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、活性フラボノイドによる選択的スプライシングの分子機構を明らかすること、さらに、この解析過程で確立した技術を用いて食品成分による選択的スプライシング制御の解析プラットフォームを構築することを掲げている。研究代表者は活性フラボノイド以外にスクリーニングで別途見いだしたコーヒー由来の化合物3CQL(特許出願2016-011389)でも選択的スプライシングが生じる現象を観察している。活性フラボノイドで実施した解析手法が他の因子にも適応可能かについて集中して解析する。この解析は今後食品成分による選択的スプライシング制御機構の迅速な解析のために欠かせないと思われる。具体的には、3CQL等について選択的スプライシングが変化した遺伝子についてrMATSによる解析や、スプライシングスコア・イントロン長・GC含量などインフォマティクス解析を行い、選択的スプライシングが生じた原因を明らかにするとともに、活性フラボノイドにて使用した解析法が食品由来の他の活性化合物にも適応可能であることを示す。
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Causes of Carryover |
実施を計画した解析多くにおいて研究が極めて順調に進行した。このため、使用する試薬等が当初計画よりも減少した。2020年度に計画していた解析を迅速かつ確実に進行させるために、実験補助や資料作成を担う研究員を雇用して計画していた解析を確実に実施する。これにより、実験計画を完遂させる。
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