2019 Fiscal Year Research-status Report
Mining unknown bacterial phylum based on the distribution of cytochrome oxidase
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19K22293
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
上田 賢志 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00277401)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | グラム陽性細菌 / Firmicutes門 / 新門 / シトクロムオキシダーゼ / 微生物探索 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで筆者らが研究対象としてきたSymbiobacteriumおよび類縁の4属は、16S rRNA遺伝子の系統樹でFirmicutesから独立したクラスターを形成し、ゲノムDNAG+C含量が高く、さらに呼吸酵素シトクロムオキシダーゼ複合体を有する点でFirmicutesから大きく異なる。しかしながら、それらは現在、嫌気性のグラム陽性低G+C含量グループの一部として全てFirmicutes門に含められている。これは、恐らくこれらの菌群の分離培養がなされておらず、正確な系統的評価がなされていないことに帰因していると考えられる。そこで、これらの性質を手がかりに探索を展開し、同様の特性を示す菌群を分離・同定し、潜在する細菌門の存在を実証することを目的とした。目的の菌の分離にむけた取り組みとして、上述の5つの菌に共通する特性をもとに、(i)水底泥を主な分離源に(ii)高温(55℃)(iii)微好気(5% O2、10% CO2)で栄養培地を用いた液体培養を行う検討を開始した。また、酸素に感受性のClostridiaを排除するために、振盪培養が有効かの検証も開始した。さらに、目的の菌の存在を検出するために、上記5属の16S rRNA遺伝子に特異的なプライマーに加えて、シトクロームオキシダーゼ遺伝子群の保存配列に高いG+C含量を反映させたプライマーを複数設計し、特異的PCR法によって検出するシステムの開発を推進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
効率的なスクリーニングを推進するための簡便な培養法として、ガス置換を行わない代わりに気相を極力除いた液体培養チューブを作成しその効果を検証した。また、培地成分に関して、完全栄養培地と同時に、Clostridiaの分離培養に広く用いられる無機塩から成る培地の使用も検討した。これらの培養条件の有効性を検証する上のモデルとして、Symbiobacterium属の複数の種ならびにCaldinitratiruptor microaerophilusを使用した。また、シトクロムオキシダーゼ遺伝子を特異的に増幅することで目的の菌の存在を検出するためのPCRプライマーを複数設計した。複合体IVを構成するドメインをコードする遺伝子ならびに、キノール型オキシダーゼ遺伝子を対象に、保存性の高い領域のアミノ酸配列に対応しG+C含量の高いプライマーを考案し、上記のモデル株に対して実効性を検証した。その結果、現在までに最も保存性の高い銅結合ドメインを含む蛋白質CoxAの遺伝子の一部が、上記の目的に有効である可能性が示唆されている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の目的を達成するために、存在が予想される新門に属する菌株を選択的に分離するための効率的な探索条件を鋭意検討する。特に、シトクロムオキシダーゼ遺伝子を標的とした特異的PCRのプライマーについて、これまでに有効性が高いと考えられるものが一組しか得られていないことから、継続してできれば複数のプライマーを設計する。海洋ならびに河川を主とする分離源から試料を広く採取し、設定する培養方法によってなるべく多く培養し、標的菌群の存在を評価する。陽性の培養液についてはそこから目的の菌を単離する作業を早急に進める。また、モデルとして使用しているC. microaerophilusについては、これまでに全ゲノム解読の実施例がないため、大量培養によってゲノムDNAを回収し、配列決定を行う。
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Causes of Carryover |
現在までに候補となる微生物株の取得に至っておらず、また、モデルとなるCaldinitratiruptorの大量培養もできていない。そのため、そのゲノム解析に必要な業務委託などを初年度中に実施しなかったため、次年度使用額が生じた。さらに、当初導入を計画したガス導入装置は他の研究プロジェクトにおいて導入できる見込みが生じたために、その購入を見送った。次年度中に鋭意菌株の分離を試み、候補株が得られ次第そのゲノム解析を実施する。また、その分離培養に必要な機器の導入も継続して検討する。
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