2019 Fiscal Year Research-status Report
低水素供給培養法を利用した低エネルギー環境からの未知メタン生成菌の分離
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19K22296
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 創一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30597787)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 微生物 / 嫌気 / 水素 / 低濃度 / メタン生成アーキア / 酢酸生成細菌 / 集積培養 / 純粋分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
以前までに作製していたプロトタイプをもとに、鉄腐食反応に伴う水素生成反応を利用した低濃度水素供給培養システムを作製した。鉄腐食による水素発生と微生物の培養をそれぞれ異なるバイアル中でおこない、その気相部分をステンレスパイプ (内径約1.5 mm) で接続することで、長期間継続して低濃度水素を培養槽に供給可能であった。既知の嫌気性水素利用微生物(メタン生成アーキア、酢酸生成細菌など)を低濃度水素供給培養システムで培養し、本システムにより長期間の水素供給培養が可能であることを確認した。次に本システムを利用し、水田土壌、酸性泥炭土壌、池底泥、海洋底泥、地下炭鉱間隙水など、多様な嫌気環境サンプルを微生物源とし、低濃度水素を利用するメタン生成アーキアや酢酸生成細菌の集積培養をおこなった。その結果、ほとんどの低水素培養系でメタン生成アーキアもしくは酢酸生成細菌の増殖が確認された。さらに一部の培養系では、コントロールの高水素培養系では集積がみられず、低水素培養系でのみ集積が確認されたものもあり、低水素環境に特化した微生物の存在が示唆された。次世代シークエンス解析による集積物の微生物叢解析の結果、低水素培養系ではコントロールの高水素培養系とは系統が異なる、新規性の高い微生物種の優占が確認された。集積培養からメタン生成アーキアや酢酸生成細菌の純粋分離を試み、いくつかの系からはすでに低水素利用微生物候補の分離に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた、低濃度水素供給培養システムの確立、既知微生物を利用した技術実証試験、低濃度水素供給培養システムを用いたメタン生成アーキアと酢酸生成細菌の集積培養、集積培養物の微生物叢解析を実施することができ、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き低濃度水素供給培養システムを利用したメタン生成アーキアと酢酸生成細菌の集積培養、およびその集積物の微生物叢解析を実施する。さらに集積物からのメタン生成アーキアと酢酸生成細菌の純粋分離を試みる。分離された微生物の系統分類解析をおこない、その新規性を評価する。また分離微生物を水素供給量を変えた条件下で培養し、低濃度水素への適応状態を調査するとともに、ゲノム配列の解読等によりその低水素適応機構を調査する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響による学会や研究打ち合わせが中止になったことによる旅費使用予定額の減算などにより次年度使用額が生じた。次年度に対外発表をより積極的におこなうことで繰り越し分を使用する計画である。
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