2020 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集による5´非翻訳領域の改変によりタンパク質発現量を増加させる技術の開発
Project/Area Number |
19K22299
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
尾之内 均 北海道大学, 農学研究院, 准教授 (50322839)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | ゲノム編集 / 5´非翻訳領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ゲノム編集技術が作物の品種改良に活用されるようになってきている。しかし、遺伝子組換えにあたらない範囲でのゲノム編集技術の作物育種への利用はほとんど遺伝子破壊に限られており、転写や翻訳を抑制する配列が同定されている一部の遺伝子以外は、外来導入DNAを残さずに特定のタンパク質の発現量を増加させることは現状では困難である。そこで本研究では、より多くの作物遺伝子において遺伝子組換えに該当せずにタンパク質の発現量を増加させることを可能にするために、mRNAの翻訳効率に影響を与える5´非翻訳領域配列をゲノム編集を用いて改変することでタンパク質発現量を増加させる方法の開発を目指す。 2019年度の研究において、CRISPR/Cas9システムを用いてイネの遺伝子の5´非翻訳領域に変異を導入し、5´非翻訳領域に様々な変異が生じた変異体を分離した。2020年度の研究では、それらの変異がタンパク質発現量にどのような影響を与えるかを調べるために、変異が生じた5´非翻訳領域をクローニングしてルシフェラーゼ遺伝子につなぎ、一過的発現解析により変異の影響を検討した。その結果、5´非翻訳領域に生じた変異によりルシフェラーゼの発現量が様々なレベルに変化し、それらの変異の中でルシフェラーゼの発現量を増加させるものも見つかった。さらに、それらの変異のヘテロ接合体の次世代の個体の中から、ゲノム編集用コンストラクトが除かれた個体や変異をホモ接合体として持つ個体をそれぞれ分離した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イネ遺伝子のゲノム編集については、予定通りゲノム編集により5´非翻訳領域に生じた変異のタンパク質発現への影響を一過的発現系を用いて解析し、タンパク質発現量を増加させる変異を同定することができた。また、ゲノム編集用コンストラクトが除かれた変異ホモ系統の確立には至らなかったものの、ゲノム編集用コンストラクトが除かれた個体と変異をホモ接合体として持つ個体をそれぞれ得ることができた。一方、新型コロナ禍の影響で研究活動が長期間に渡って制限されたため、トマト遺伝子のゲノム編集体の解析については研究の進行が遅れた。以上のことを総合し、「やや遅れている」と判定した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に一過的発現解析によって変異のタンパク質発現への影響を確認したイネのゲノム編集体について、ゲノム編集用コンストラクトが除かれた変異ホモ接合体系統を確立する。確立した系統を用いて、変異体が期待通りの形質を示すかを解析する。トマト遺伝子の5´非翻訳領域のゲノム編集については、これまでに得られた変異体の解析と新たな変異の探索を引き続き行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナ禍の影響で研究活動が長期間に渡って制限されたために研究の遂行が遅れ、そのために未使用額(次年度使用額)が生じた。2021年度において同様の長期間に渡る研究活動の制限が無ければ、次年度使用額は翌年度分として請求した助成金と合わせて2021年度中に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)