2019 Fiscal Year Research-status Report
Induction of nitrogen-fixing root nodules in rice
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19K22303
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
岡崎 伸 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40379285)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 根粒 / イネ / 窒素固定 / 根粒菌 / エフェクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、宿主の根粒形成シグナルを直接起動する根粒菌とマメ科植物由来フラボノイドを利用してイネ科植物に窒素固定根粒を形成させることを目的としている。今年度の研究実績は以下のとおりである。
1. 根粒形成シグナルを直接起動する根粒菌エフェクターの発現解析・・・イネ科植物根圏で根粒形成シグナル活性化エフェクターを発現させるため、エフェクター遺伝子の発現を誘導する物質の探索をおこなった。RT-qPCRの結果から、無添加条件下ではイネ科植物根圏では根粒菌エフェクター遺伝子の発現は低く抑えられていること、ダイズ根の粗抽出物およびゲニステイン(1 uM)の添加により発現が強力に上昇することを確認した。 2. 2,4-D添加によるイネへの根粒様組織の誘導・・・過去の論文(Hiltenbrand et al. 2016)を参考に 2,4-D添加によるイネへの根粒様組織の誘導を試みた。イネ品種は日本晴を用いた。50mlコニカルチューブにバーミキュライトとMS培地を充填し、表面殺菌したイネ科植物種子を播種した。これに50 uMの2,4-Dを添加して栽培を続けたが、栽培開始後30日経過しても根粒様組織は認められなかった(論文では14日で根粒様組織が観察されている)。また、2,4-Dの濃度を100および250uMまで増加させた場合でも同様に根粒様組織の形成はみられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2,4-D添加によるイネへの根粒様組織の誘導ができておらず、したがって根粒菌による当該組織への感染と窒素固定への展開へ進めていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は下記のように研究を進める計画である。
1. 2,4-D添加によるイネへの根粒様組織の誘導・・・これまでの結果では過去の論文の条件を参考に50 uMの2,4-D添加による根粒様組織の誘導を試みたが、これまでに根粒様組織は観察されていない。今後は(1)根粒様組織の2,4-Dの濃度をより低濃度から高濃度までの数段階の濃度で検討する。さらに、2,4-D以外のオーキシン類縁体も検討する。また、イネ品種についてもこれまでの日本晴に加え、野生イネや世界イネのコアコレクションを利用して、広範囲の遺伝的背景を持つ集団を調査対象とする。
2. 上記で根粒様組織が形成された条件において、根粒菌とダイズゲニステインの同時接種を行い、根粒菌の感染と窒素固定が起こるか検討する。根粒菌感染はgusA遺伝子またはGFPなどで標識した根粒菌の接種により観察する。窒素固定についてはアセチレン還元活性により測定する。
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Causes of Carryover |
2,4-Dによるイネへの根粒様組織の誘導実験が予定通り進まなかったために、消耗品、試薬購入費用の残額が生じた。今後、当該実験を進めることで次の実験(根粒菌感染試験、窒素固定活性測定)に必要になる試薬等の購入に充当する計画である。
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